ニッケイ新聞 2010年12月21日付け
近頃では佐渡のトキが絶滅し、話題になったが、これと同じ品種のものが中国にいるので譲ってもらい養殖に成功し、今は野や山に放鳥するまでになっている。こうした動物や鳥類が絶滅している例は多い。江戸の頃には「ヤマイヌ」と呼ばれた日本オオカミも明治38年(1905年)に捕獲された若いオスを最後にし絶滅してしまった。動物作家の戸川幸夫が直木賞を得た「高安犬物語」のマタギ犬も、死に絶えてしまったのも、真に残念としか言いようがない▼戸川幸夫は、1965年にイリオモテヤマネコを発見した人であり、動物については詳しい。だが、津軽犬など滅びてしまった和犬もいっぱいなのである。こうした厳しい状況のなかで絶滅したとされる「幻のクニマス」生存が確認されたのニュースには、びっくり仰天するしかない。秋田の田沢湖にだけ生息している魚なのだが、1940年かに酸性の水が大量に流れ込み絶滅したとされるクニマスが山梨の富士5湖の一つ―西湖で元気一杯に泳いでいたのだから、これはもう驚くしかない▼17日付けの3頁で報じたような経緯で発見されたのだけれども、これはもう偶然の重なり合いとしか、申しようがない。約70年ぶりに見つかったのだが、西湖では、よく釣れるらしいのだが、ヒメマスの別種として「あまり美味くない」と湖に返していたそうな。まあ、環境省では「過去50年間に生存が確認されていないものは絶滅」の規定があるそうだから、クニマスの絶滅も致し方ないが、この「幻」が見事な雄姿を見せて呉れたのは、何とも喜ばしく嬉しい。(遯)