孫の居ないXマスに涙=連れ去られてはや丸1年=米国人父親と扶養権争で
ニッケイ新聞 2010年12月25日付け
「昨年のクリスマスイブに孫がブラジルを去ってからすでに1年、話す事も許されない」―。シウヴァーナ・ビアンシさんは、クリスマスも涙を拭うことができない。シウヴァーナさんの愛する孫ショーン君(10)は、伯米両国をまたいだ扶養権の争いから昨年米国人の父親によって米国へと連れて行かれた。21、24日付伯字紙のインタビューでその辛い心境を吐露している。
シウヴァーナさんの悲劇は、ショーンの母親であり娘であるブルーナさんが、再婚後の08年、2人目の出産時に亡くなった事に始まる。米国で生まれたショーン君は、米国人の元夫デイビット・ゴールドマン氏との間にできた子だった。同氏と離婚しブラジルで5年間ショーン君を育てたブルーナさんの死後、ショーン君を米国に連れ戻したいという同氏の権利が昨年連邦最高裁判所(STF)から認められた。
同氏とその友人はサイトを立ち上げ、ショーン君を巡る裁判運動に伴いマグカップやTシャツを売って裁判費を工面してきたほか、来年に同氏は「Father,s Love(父親の愛)」という本の出版も進めているという。この動きは米国議会の注意を仰ぎ、昨年にヒラリー・クリントン米国務長官が伯政府に少年の〃帰国〃を要請することにつながった。
シウヴァーナさん家族はショーン君と話す際に英語を使うこと、ブラジルのことを話さないなどの条件を提示されていた。しかし、今年6月22日に電話越しに簡単な言葉を交わしてからは、一切の連絡がつかない。ゴールドマン氏は住居の電話番号を変えており、携帯電話も誰も出ないという。シウヴァーナさんはショーン君の訪問を望み米国の法廷に持ち込んだが、22日却下された。
ショーン君のブラジルでの滞在は国際法で〃誘拐〃扱いにまでなってしまった。「ショーンはブラジル国民。誘拐などされていない」と主張するシウヴァーナさんは、「幼い彼の人生が政治問題になり、本人に何の選択権もないまま勝手に私達との絆が絶たれてしまった」と声を落とす。
「ショーンが生きているかどうかも分からない。元気ならそれでいい」と話すシウヴァーナさん。唯一願うのは、大きくなって自らの意見を主張できるようになったショーン君が、ブラジルの家族との再会を望むことだ。愛する孫にクリスマスの贈物を買わなかったのは今年が初めてで、手紙が届いたのかも分からないという。