ニッケイ新聞 2010年12月25日付け
世界に散らばる在外ブラジル人約300万人の代表者を選ぶ「在外ブラジル人代表者評議会」(Conselho de Representantes Brasileiros no Exterior=CRBE)の選挙が11月上旬に行われ、全世界16人の正評議員のうち在日日系人3人が選ばれたことはすでに報じた。今月2~3日にリオ市セントロにあるブラジル外務省で行われた「第3回在外ブラジル人コミュニティ大会」では、その16人の評議員会長として篠田カルロスさん(54、二世)=愛知県在住=が選ばれ、ルーラ大統領から信任状が手渡された。8日に来社した篠田さんは「300万人の代表として重い責任を感じます」と表情を引き締めた。
篠田さんは「17年間日本でがんばってきたのが評価された」と満面に笑みを浮かべた。90年代にはデカセギ子弟の教育問題解決のために通信教育の制度確立に奔走し、現在はブラジル人学校校長として厳しい現実と直面している。
「50歳以上の在日ブラジル人は4万1624人にもなる。彼等には遠くない将来、年金問題が発生する。これは日伯の問題だ」と警鐘を鳴らす。デカセギ25周年の間に、20代訪日なら50代になっている。その間、年金を払っていない者が相当数いると推測される。
在日ブラジル人の特徴は、その大半がビザのある合法滞在であることだ。裏返せば在米ブラジル人128万人、在欧州ブラジル人81万人という桁違いに多いコミュニティのかなりの部分がビザなしで、年金を含めた様々な重大問題を抱えている。「僕は世界全体の問題を考える立場になった。各地で事情は全く違う。お互いの経験を役立てるようにいろいろな国で情報交換していきたい」。
在外ブラジル人代表者評議会は、6月15日付け大統領令7214で制定されたもの。「在外ブラジル人の問題を解決したいという大統領の強い意志を反映した肝いりの法律。僕らは初代評議員としてそれを実際に機能させ、在外者の声をイタマラチーに伝え、みなにこの制度の有用性を分かってもらうのが役割だと思う」。出来たばかりの制度で活動費も権限もほとんどなく、まずは組織や体制を整えることが必要だと、篠田さんは考えている。
リオの今大会には2日、アントニオ・パトリオッタ次期外務大臣が出席し、3日にはルーラ大統領自ら出席して、評議員全員に信任状が手渡された。
「ルーラは『任期中に大統領としての公約を果たすことが出来て嬉しい。ジウマになってもCRBEは後戻りしない』と挨拶していましたが、大変力強く感じました」
首都ブラジリアで会議をし、今年いっぱいで活動予定を策定、来年から実施していく。年一回の世界大会と半年に一度の世界4地域ごとの評議員会だけは決まっている。
毎年12月に開催される同大会には、国内からの参加も可能だという。「ぜひサンパウロ州、パラナ州の日系団体代表や日系政治家にも積極的に参加してもらい、日系人の経験と力を見せて欲しい」と呼びかけた。