ニッケイ新聞 2011年1月5日付け
「最近のNHKをみていると、どうにも自民党がだらしなく思えてくる。母県のことが、そして日本のことが心配でならない。河村先生、ここで本当のことを教えてください」。酔った勢いも手伝ってか、閉会の挨拶を任されたはずの西田康二顧問は、思い切った質問を投げかけ、居合わせた県人会員は固唾を呑んで、衆議の言葉を待った。
これは、新大統領就任式に列席するために来伯した河村建夫衆議の歓迎会が3日晩に行なわれたサンパウロ市のブラジル山口県人会(要田武会長)での一コマだ。新年早々ながら約40人が詰めかけて部屋がいっぱいになる中、衆議の日伯関係の裏話や母県の政治情勢などの土産話に熱心に耳を傾けていた。
「こりゃ、国会で答弁するより難しい!」。上座に立ち上がった河村衆議は開口一番、そういって座を沸かした。
河村衆議は名刺の肩書きが「選挙対策局長」であることに触れ、「今年は勝負の年にしたい。自民党は出直しをする。政権奪回する様子を皆さま地球の反対側から見ていてほしい」とぶち上げると、司会の西村武人第一副会長は「次の山口出身の総理はぜひ河村先生に!」と合いの手をいれ、西田顧問は「そりゃ、私が言おうと思っていたセリフだ」というと、会場は爆笑の渦に飲み込まれた。
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これ以前に河村衆議は挨拶の中で、師である田中龍夫衆議から「ブラジルのことをしっかりやれ」と言われて引継ぎ、自ら日伯議員連盟の事務局長、幹事長として渡辺美智雄、三塚博、橋本龍太郎3氏、現麻生氏ら錚々たる歴代会長を支えてきた歴史をふり返った。
移民90周年に小渕恵三外務大臣(当時)と共に来伯した。「あの時に小渕先生は移民百周年の時には総理としてぜひまた訪れたいと言われた。ところが帰ってすぐに実際に総理になった」。
移民百周年で来伯された皇太子殿下にお供して、麻生日伯議連会長を代表とする超党派の議員団を河村衆議が呼びかけた時も、麻生会長に「ブラジルに行ったら総理になれる」と口説いたとの裏話を披露し、「帰ってすぐに実際に総理になり、私が幹事長に指名されたので、もっと驚いた」とその場を沸かせ、「ブラジルは我々にとって良い方向」と締め括ると、会場からは喝采が送られた。
百周年式典に来伯した時に麻生会長と共にルーラ大統領と会談し、2016年五輪開催地の決定前だったので、大統領から「リオの会場の半分を日系人でいっぱいにする。そしたら東京開催と一緒になるだろう。五輪は我々に任せてくれ!」と譲歩を迫られたエピソードを紹介し、「日系人が150万人もいる国が他にどこにあるか。ブラジルとの関係を緊密にすることは重要なこと。みなさんがこんなに存在感を見せて頑張っていらっしゃるのだから」との熱い気持ちを吐露した。
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乾杯の音頭をとった平中信行顧問は「ぜひ近いうちに与党に返り咲いてください」と発声、全員でグラスを高々と掲げた。途中、上田博臣さんの先導で県歌や『長州音頭』を、全員が気持ち良さそうに手拍子交じりで高歌放吟した。
当日は、母県が誇る詩人、中原中也記念館の福田百合子名誉館長も出席した。姪にあたる伊藤紀美子事務局長の娘の大学卒業式にあわせて来伯していた。
サンベルナルド・ド・カンポ市在住の小野凱幸さん(69、山口)は「河村先生の話を聞いて誇りに思った。官房長官までやった人の話はやっぱり違う」と感心した様子。サンパウロ市在住の嵐田英代さん(71、山口)も「NHK見ててすごく心配していたが、話を聞いて何がどう変わったのかが良く分かった」と満足げな表情を浮かべた。