ニッケイ新聞 2011年1月7日付け
3日に行われた中央銀行のアレシャンドレ・トンビニ総裁就任式後、ドル下落やインフレは04年以来の高率など、庶民にも気がかりな報道が続いている。就任式挨拶で「あらゆる手段でインフレ抑制」と約束した新総裁に対する、「政策金利引上げは経済危機を意味しない」とのメイレーレス前総裁の言葉は一つの援護射撃といえそうだ。
4日付伯字紙によれば、新総裁は3日、インフレ抑制のために最善を尽くす事を約束した上、持続可能な成長のためにはインフレは低率でなければならないとの考えを明らかにした。
ブラジルのインフレ対策の一つは上下2%を許容範囲とする年4・5%という目標値の設定で、中銀のインフレ抑制策の決定をより容易にする材料でもある。6日付エスタード紙によれば、新総裁が3日に将来的には目標値も引き下げると発言した事で、13年適用の目標値は4〜4・25%程度との期待も出始めた。
ただ、この新目標値決定や、18、19日の通貨政策委員会(Copom)での政策金利決定に影響を及ばす筈のインフレ動向は、楽観を許さない状況と言えそうだ。
というのは、政府の公式指数IPCAではないものの、家賃調整に使われるIGP—Mの11・32%上昇や、サンパウロ市内物価の6・4%上昇は04年以来の高率といった報道が続いているからだ。
インフレが上昇傾向にある事は市場関係者らの予想をまとめたFocusなどでも報じられ、景気の回復に伴う所得向上や消費の過熱、年末商戦などの要因を差し引いたとしても、農産物の値上りなど、財布の中身が気になる状態はここしばらく続く見込みだ。
ドル安に伴う廉価の品の輸入増はインフレ抑制に一役買った反面、工業などの国際競争力をそいだと避難の的にもなった為替政策では、4日にマンテガ財相がドル安抑止策を採ると宣言し、6日には中銀が、ドル売りに伴う収益に対する預金準備率を引上げるという政策を発表した。
5日の中銀発表によれば、昨年1年間でドル安抑制のために中銀が買い支えたドルは、09年の72%増しに当たる414億ドルで、貿易や生産投資などで流入した243億ドルの倍近い。
需要に対し供給が多ければ価値が下がり、供給が少なければ価値が上がるのが市場原則。インフレ抑制策としての預金準備率や政策金利引き上げや、ドル安レアル高抑制のためのドル買いなど、長短期の経済動向を見極めた上で中銀総裁が下す判断に注目と期待が集まっている。