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森林農法産品の品質認証へ=ベレン=協議会創立準備会を発足=カカオが日本でチョコに=武藤や福原の夢が実現

ニッケイ新聞 2011年1月7日付け

 【パラー州ベレン発】アマゾン入植80周年を迎えた一昨年末、トメアスーの森林農法(アグロフォレストリーシステム)で生産されたカカオ豆が、フルッタフルッタ社(代表=長澤誠、以下FF社と略)を通じて明治製菓に110トンが初出荷されたことは既に報じたが、その豆を使ったチョコレートが、いよいよこの4月から日本で発売されることになった。それに伴い先月末、パラー州都ベレンで「商業アグロフォレストリーシステム協議会」の創立準備委員会が正式に発足し、今後、市場に出回る森林農法の生産物の品質を認証する仕組み作りが始まった。

 1929年のトメアスー入植を計画した南米拓殖株式会社(福原八郎社長)では、カカオを最初の商品作物として構想していたが、当時は不採算で初期入植者らは涙をのんだという苦い歴史がある。南拓創立に尽力した鐘淵紡績の武藤山治社長ら拓人の夢が、80余年を経た今ようやく実現しようとしている。
 昨年12月28日午後、汎アマゾニア日伯協会の会議室で「商業アグロフォレストリーシステム協議会」の第2回創立準備委員会が開催された。
 アマゾン生態系と共存する形で農業を発展させる、トメアスー移住地の農家が先鞭をつけた森林農法はいまや全伯に普及されており、いずれ各地の生産物が市場に流れ込んでくると予想される。
 そのため、今のうちに森林農法の生産物の品質をきちんと認証する団体を設立し、エコ(環境)商品としての価値を下げない仕組みが必要だとの認識が、関係者には広まっていた。
 同会議終了後、4月から発売予定のチョコレートの見本が発表されると、同協議会設立に疑心を持っていた一部参加者の不安感も払拭された。先進国に生産物を供給するには品質管理は必要条件だが、販路が確立されていない段階なら、認証の仕組み作りの手間も惜しまれるからだ。
 同協議会創立準備委員会は長澤FF社代表を議長に、坂口フランシスコ渡氏(CAMTA=トメアスー農協=理事長)を副議長兼通訳、林健祐氏(WRS=研究者)を書記に選出した後、参加者の紹介に移った。
 参加者はアマゾニア連邦農科大学准教授やUSP農学部講師、パラナ連邦大学農学部准教授に加え、加藤オズヴァルド・リョウヘイ(EMBRAPA=上席研究員)、ライムンド・メーロ(CEPLAC=ブラジルカカオ院)、斉木イヴァン仁(CAMTA専務理事)、小長野道則(CAMTA農事部担当理事)、山田祐彰(東京農工大学講師)、森摂(REVISTA・ALTERNA編集長)、杜山悦郎(FF社)、松田恵子(FF社)ら14氏。
 会議は山田講師によるアイデアと参加資格の概要説明、大橋セルマ准教授が設立後の認証プロセスを説明し、同協議会創立についての論議が交わされた。出席した大学教授らは、関係公共機関の代表者に対する公式招待状を発送し創立総会に参加してもらうことが最重要だと強調した。
 これに対し長澤議長は公式招待状に会議の議題、計画書及び協議会の定款コピーを添付して発送すると回答、「各関係官庁の参加は我々の協議会には絶対必要です」と答えた。
 最後に同協議会創立準備委員会の委員長に山田講師、副委員長に大橋准教授、書記に長澤代表が選出された。(下小薗昭仁パラー通信員)