ニッケイ新聞 2011年1月11日付け
その昔、中国に董奉がいて患者を治療しても報酬を受け取らずに山や野に杏の木を植えなさいと薦め、数十年後に立派な林になったことから—杏林は医師の美称になって今に生きる。この他にも華陀や扁鵲とあの5000年の歴史を誇る国には名医がいっぱいいる。古代ギリシャには「医学の父」ヒポクラテスがおり科学的な医学の確立に尽力しているのは、人口に膾炙している▼日本では近世に限っても、全身麻酔剤「通仙散」を用い子宮の手術をした紀州の華岡青洲やペスト菌の北里柴三郎もそうだし赤痢菌発見の志賀潔も忘れてはいけない。こうした医の神聖な歩みをする人は、哲学者であり神学者の医師シュバイツアーがノーベル平和賞に輝いているけれども、この世は広い。医師のポストを悪用しての悪逆非道は洋の東西を問わず数え切れない程に多い▼あの列島では奈良の「山本病院」が、135人の患者に必要のない心臓手術をして2億円かの治療代を詐欺したの醜聞が報道され非難の的になっている。証拠となる動画ディスクを専門家7人が鑑定したところ、手術の必要はない—となり、まったく心臓が悪くない患者もいたというから恐れ入るしかない。しかも、これら哀れな患者は生活保護を受給する貧しい人が多いと言うから何とも情けない▼我がブラジルは、あの不妊手術の名手?ロ・アブデウマッシである。これほど不埒千万な好き者は、あの7人強姦殺人の小平義男を上回る。麻酔を掛けてのご婦人方への不届きが39人。これを刑務所へぶち込め論が起こり ご本人は顔面蒼白らしいが、まあ、これが中国なら間違いなく死刑ですな。(遯)