ニッケイ新聞 2011年1月15日付け
石原慎太郎さんの政界を見る眼は、かなり辛辣である。ときには罵詈雑言になるときもあるが、与謝野馨氏の入閣には「バカじゃないか。沈没しそうな船に乗るなんてー」と斬って捨てる。みんなの党の渡邊喜美代表は、これまた厳しく「廃材内閣」ときめ付ける。と、菅再改造内閣の評判は眞によろしくない。江田五月前参院議長の法相という「おまけ」もつき、これには世間もびっくり仰天するしかない▼これは日本の議会史上初めてのことだし、永田町がガヤガヤと騒ぐのも致し方ない。まあ、若かりし頃は、判事補だったので法律には詳しそうだから法務大臣にはいいのかも知れないが、兎にも角にもサプライズ人事なのは間違いない。この人もまた自民党の嫌われ者だし、参院の運営を巡ってああでもない、こうでもないとやり合った仲であり、先行きがどうなることやら—▼それでも、「自衛隊は暴力装置」の仙谷長官と馬渕国土相を閣僚から外したのは評価したい。尤も、菅首相は「問責決議の結果ではない」と語っているが、これはおかしい。参院の問責決議に法的な力はないが、自民党の額賀防衛長官が、問責決議を受けて辞任しているし、参院議長の西岡武夫氏も「仙谷氏の退任」を強く求め「文藝春秋」に論文まで発表し、これは誰が見ても、事実上の「更迭」であるのは否定できまい▼それに—「反小沢」路線が、これほどに鮮明なのは珍しい。「政治とカネ」の問題もあるので正義の味方・菅さんには、もってこいの責め道具だろうが、政権の前途には、消費増税やTPPなどの難問が山積しているのも忘れまい。(遯)