課題のしかかる貧困撲滅=自立しない生活扶助受給者=低賃金の雇用で仕事続かず
ニッケイ新聞 2011年1月18日付け
ジウマ大統領選は選挙公約で貧困撲滅を宣言したが、ルーラ政権から引き継ぐ生活扶助政策「ボウサ・ファミリア」の受給者には仕事を得ても1年以内で辞めてしまう人が多く、経済的な自立を促すにはまだまだ時間がかかりそうだ。今後発表される新たなPAC(経済活性化計画)の詳細など、新政権の対応が注目される。16日付エスタード紙が報じた。
現在は家族1人あたりの収入140レアル以下の家庭が生活扶助の対象となるが、受給者で仕事を継続している人は少ない。社会開発省が行った2003〜07年の調査によれば、雇用を得ても半年以内に辞めてしまう人が30%、1年以内に辞めてしまう人が過半数だった。この調査期間に再就職した人は25%。また、就労していても、社会福祉制度が適用される労働手帳を持たない人が75・2%と多く、一般労働者の49・8%という割合に比べて低くなっている。
Ipea(応用経済研究院)のデータでは、ボウサ・ファミリア受給者の労働人口では、就学年数が4年以下という人が52・7%を占める。中等教育を完了している人が10・6%、高等教育に進む人は0・2%とごく一部で、5人に1人は就学年数が1年にも満たない。こういった低学歴の受給者は月給22〜200レアル程度の仕事にしか就けず、自ら諦めてしまう人が多い。
生活扶助受給生活からの〝独り立ち〟はルーラ政権の貧困撲滅の第2ステップに掲げられたが、こういった新たな局面にプロジェクトの見直しが迫られる。社会開発省のテレーザ・カンペロ大臣も「問題は続いている。受給者が扶助を必要としなくなる環境が整わなければ」として、新たなPACの中身を検討中だ。
今日、ボウサ・ファミリアのリストに挙げられるのはブラジル人口の5人に1人。受給期間に期限はなく、2年ごとに調整が図られており、自動的にリストから除外されることはない。
17日付フォーリャ紙によれば、ジウマ大統領は、毎日、自宅から大統領府までの通勤の道のりでゴミ収集者の貧しい生活ぶりを目にしているという。大統領が自分たちの存在に気付いていると確信するゴミ収集者のカルロス・ロベルト・ドス・レイスさん(42)も、「ぜひ選挙公約を果たして欲しい」とメッセージを送っている。