ニッケイ新聞 2011年1月18日付け
ここブラジルでも、銃の所有禁止を目指したことがあるが、見事に失敗したのを記憶に留めている方は多い。確か4—5年ほど前の話だが、政府も力を入れテレビで大キャンペーンを繰り広げ警察に拳銃やライフルを自発的に提出し、ブルドーザーを出動させ、これらの「凶器」を踏み潰す映像に視聴者は大いに喜んだものである。ところが、これを国民投票で決めようとすると、政府の動きに反対する「所有派」が猛然と立ち上がり、今も拳銃は街に満ちている▼これはアメリカもまったく同じであり、凶器と化した銃器による犯罪は跡を絶たない。あのケネデイ大統領の暗殺や司法長官も務めた弟のロバートも狙撃され非命の最期だったし、この後には韓国系の2世学生による大学構内での31人銃殺のおぞましい事件も胸底に生きている。先頃、米西部アリゾナで起きたガ・ギフオーズ下議を狙った銃撃事件も、銃器社会がもたらした悲劇である▼女性下議は頭部に銃弾を受け重体だし、6人が死亡、13人が負傷という大事件になり、オバマ大統領夫妻も追悼式に出席したが、この悲惨な銃乱射の無謀さを戒め、もっとゆったりとした平穏な暮らしを望みたい。だが—これはとても難しい。あの巨大な国は、西部劇のような「銃の世界」で成り立っているのであり、「所有禁止」を訴えても、これを受け入れる人は極めて少ない。この拳銃を持ちたいの意欲は、恐らくブラジルよりも強い▼犯人のロフナーは、精神異常らしいけれども、拳銃を持つのが普通のアメリカでこんな悪辣な事件の絶滅を願うのは元々が無理なのかもしれない。(遯)