ニッケイ新聞 2011年1月20日付け
南東伯を雷雨が襲った18日、大サンパウロ市圏のマウア市で新たな死者が出、サントアンドレー市でも洪水が起きるなど、同じ様な災害が同じ様な場所で繰返されている。1967年の土石流被災地のサンパウロ州カラグアタツーバや今回被害のテレゾポリスなどは、被災地に戻り住む人々が絶えない事の証拠でもあり、地球温暖化などでますます激化する自然災害回避には大きな意識変革も必要な事を示している。
サンパウロ市全域に注意報が発令された18日午後、雷を伴う雨は、マウア市での死者1人、ABC地区で水に囲まれ軍警ヘリで救出された人4人、鉄道や地下鉄が動かず帰宅の足を奪われた人無数という事態を引起こした。
19日付伯字紙によると、マウアの死者はジャルジン・ザイーラ住民。家屋倒壊の直前、難を逃れようと川に飛び込んで溺れたという。同地区では土砂崩れが頻発し、今年だけで少なくとも4人の命が奪われている。
また、タマンドゥアテイー川の増水で一面の海と化したエスタード大通りなどでは、水に囲まれて動けなくなった車が続出。風も吹く中、軍警ヘリによる運転手ら4人の救出劇が展開された。
サンパウロ市内では十数カ所で洪水が起きた他、コンゴ—ニャス空港発着便が一時運航を停止。近郊電車(CPTM)が部分運転、地下鉄も減速運転となった事で、バラ・フンダやセーなどの駅が大混乱。イタケーラ駅では混乱が広がり、警官がゴム弾や催涙ガス使用という緊張した場面もあった。
大サンパウロ市圏が雨に弱いことは周知の事実だが、19日付伯字紙では、リオ州セラーナ地方での土石流発生まで国内最大の自然災害被災地だったサンパウロ州カラグアでは泥沼と化した現場が再び人家で埋まり、セラーナ地方テレゾポリス市でも、2001年の土砂災害で家を失った住民が再び被害に遭ったとも報じている。
この報道は、山の中腹や川沿いといった危険地域の住民撤去が困難である事を示す例。190ヘクタールの農園を買い上げ、集団住宅その他建設というテレゾポリス市再建計画などの一刻も早い実現が望まれる。
19日16時過ぎの報道でのセラーナ地方の死者は730人。行方不明者は300人を超えており、被害者数の1千人突破は確実なようだ。
同地方への救援物資や義捐金募集に関し、リオ市では17日夜、リオ州立大学を出発した物資搭載のトラック運転手らが市西部で別の車に荷物を積み替えていて逮捕という事件発生。防犯のため物資搬送車には道路警察伴走との報道もある。
一方、14日に現地入りした支援者の一人は、先祖所縁の地が被災し、人々が苦しむ姿を見たオルレアン・ブラガンサ家のジョアン皇子。救援物資入りの箱を担いで歩く姿に気づいたカトリックの司祭が「なぜ貴方がこんな所に?」と尋ねたところ、「私も支援者の一人さ」と答え、物資搬入の列に戻ったという。