ニッケイ新聞 2011年1月22日付け
「ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ(我が家、我が人生)」計画で建設され、低所得者達に鍵が手渡された最初のアパートで、債務不履行や不法な転売などが起きていると21日付エスタード紙が報じた。サンパウロ市の市街化計画縮小や被災地の賃貸住宅不足など、住宅政策の諸問題が表面化している。
貧困撲滅を看板の一つとするジウマ大統領が官房長官だった09年導入の住宅政策「ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ(MCMV)」は、低所得者にも持ち家をという発想で始まったものだが、エスタード紙の報道は、机上の政策と入居者の実態が噛み合っていない事を露呈した。
ルーラ政権では100万戸の販売を目標に280億レアルが投入されたMCMVは、売買契約数こそ100万件に達したものの、入居に至ったのは30万戸以下。今回問題となったバイア州フェイラ・デ・サンタナのアパートは家族収入1395レアル未満の人用の440戸で、昨年8月に入居が開始された。
うち50戸は水害で家を失った家族に提供されたが、時価1万5千レアルのアパートを入居前に500レアルで転売したり、月50レアルのローンが払えず立ち退きの恐怖に怯えている人もいるという。
新政権では、14年までに月収4650レアル未満の家庭対象に200万戸(月収1395レアル未満の家庭用120万、2790レアル未満用60万、4650レアル未満用20万)提供との公約に基づき、717億レアルを投ずる予定。同アパートの映像は大統領選ビデオにも使われたが、失業中で収入は生活扶助のみといった人々には月々の支払が重い。
また、自分は住まずに賃貸する例や高級車を乗り回す人物がアパート購入という例もある。関連業務を担当する連邦貯蓄銀行では、入居開始から6カ月での債務不履行や不法転売などの横行に、同計画の今後を懸念する声も出始めている。
一方、20、21日付伯字紙によると、サンパウロ市では、2012年までに実行予定の223項目中、市街化や教育関連の18項目の目標値を変更。ファヴェーラ市街化計画の対象12万家族を8万5千家族、ファヴェーラや不法分譲地住民への対応も7万5千家族から6万家族になど、大半の目標値が20〜30%縮小された。
また、大規模災害が起きたリオ州では20日、セラーナ地方主要3市の6千家族に月500レアル、その他の市の1千家族に月400レアルの住宅補助支給が決まり、21日からは避難所などでの補助申請受付が始まったが、同地方の問題は賃貸住宅の不足。家族や資産を喪失した被災者の多くは、物件不足と家賃値上りなどの問題にも直面する事になりそうだ。