ニッケイ新聞 2011年1月22日付け
春日神社のシカは人気者だけれども、今の日本はシカがイノシシと大暴れしているそうだ。森の樹木を傷つけたり、農地にまで侵入し栽培物を片っ端から食いまくるのだから農家は怒る。農水省が学者らと組んでいろいろな対策を講じているのだが、効果のほどはさっぱりなのである。東京の多摩地方のシカ被害も大きいのだが、なぜこんなことになったのか専門家も「わからない」と首を傾げているのだから始末が悪い▼農協新聞によると、鳥獣による農産物被害は199億円に達するのだから、これはもう放っては置けない。電気柵で耕地を囲んだり、狼の尿を製品化したものをアメリカから輸入した「ウルフピー」だの防衛策も実施しているのだが、これとても万全とは言えない。元々—熊とカモシカは山奥、シカはより低い平地に暮しイノシシは人里に近い里山に棲んでいたのだが、どうもこの自然の配置が崩れたらしいのである▼しかも、近頃はイノシシが住宅街に現れ人をも襲うし、畑の作物も食い散らかす傍若無人ぶりときては、いかなおとなしい農民も怒り心頭に発するというものである。日本のイノシイは70から100キロが普通なのに最近は200キロを超える大物も珍しくはないし、これも農作物摂取による肥満化らしい▼「山鯨」「牡丹」と呼ばれ鍋にするイノシシや「奥山にもみじ踏みわけ鳴く鹿の声きくときぞ秋は悲しき」からシカ肉を肉食禁止の僧侶らの隠語で「もみじ」とし、刺身の口福を満喫したそうだが、これらの悪獣?退治にオオカミを輸入し山に放すとかの豊後大野市の話は、遯生としては、どうも賛成しかねるがー。(遯)