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ごみ山でオスカー狙う?=リオ埋立地が映画の舞台に=伊国芸術家と収集者ら描く

ニッケイ新聞 2011年1月28日付け

 アンジェリーナ・ジョリーを間近に見たい—。ごみ収集者のそんな夢が叶うかもしれない。25日、リオのごみ埋立地で撮影された映画「Lixo Extraordinario」が、第83回アカデミー賞のドキュメンタリー部門最終選考に残ったと発表された。あるイタリア人芸術家とそれに関わるブラジル人ごみ収集者の活動を収録した実話が注目を集めている。26、27日付伯字紙が紹介した。
 同映画はブラジル人とイギリス人監督によって作られた伯英の合作で、撮影には3年がかけられた。リオのドゥッケ・デ・カシーアス近郊にあるラテンアメリカ最大のごみ埋立地ジャルジン・グラマショで芸術活動を続ける、プラスチックアート家Vik Muniz氏の芸術活動が取り上げられた。同氏がごみで作り上げた作品は世界の競売で売買され、同地で作業するジャルジン・グラマショ・リサイクルごみ収集者協会には、売上の一部から今まで7万4千レアルが寄付されている。
 映画ではごみ収集者たちをアシスタントに雇い、埋立地で手に入れた材料を使って大きなオブジェを作り出す同氏の芸術活動の様子が撮影された。撮影場所の大部分はごみ山で、映画の撮影に協力したごみ収集者には1人に1万レアルの謝礼金を渡したという。
 1977年に作られ、リオ大都市圏5都市から日に9千トンのごみが運び込まれて来るグラマショ埋立地は、2012年からはセロペジカ市に建設中のごみ処理センターに代替される予定。同埋立地では約2500人のごみ収集者などが、月1200レアルに達する収入を得ていた。埋立地の周辺には、間接的な意味で埋立地からの恩恵を受けている労働者が約7千人おり、閉鎖に反対する声も数多く挙がっている。
 映画の撮影で、ドイツやスペイン、韓国のごみ収集システムを見てきたという同協会会長のセバスチアン・C・サントスことチオンさん(32)は「外国ではリサイクルごみの収集は環境問題への取り組み。ここブラジルでは、そういう仕事に携わる人が社会的差別を受けなければならない」とその現状を訴えた。
 ドキュメンタリー部門の選考に残る他の候補はアメリカ映画3本、英米合作映画1本で、選考結果は2月27日にロサンゼルスで発表される。Vik氏がチオンさんを授賞式に招待したそうで、チオンさんは冒頭のように話しながら受賞の期待に胸を膨らませる。同日は埋立地に中継する大画面を設置し、パゴッジのバンド演奏と共に賑やかに応援するそうだ。

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