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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年2月1日付け

 峻険なアルプス山脈をアフリカの象を率いてローマに攻め込んだハンニバル将軍の話は人口に膾炙しているが、この古代の名将は地中海に大艦隊を誇ったカルタゴの人であり、あのローマ奇襲は紀元前218年のことだった。今、この国はチュニジアとなっているが、政権に反対する民衆の蜂起によってベンアリ前大統領が亡命し政治混乱が続いている▼動乱の影響は大きく、エジプトでも、ムバラク政権打倒を叫ぶデモが起こり危機に瀕している。そのアラビアの大国では、サダト前大統領もイスラム過激派によって暗殺され、ムバラク氏が81年に政権を握り30年に亘り半ば独裁体制でやってきたのだが、イスラム教には寛大とはいえない面があったのは否定できない。こうした不満が積っており、チュニジア情勢の動きもあり起ちあがったと見ていい▼レバノンやカリブ海のハイチもだし、あのイタリアもベルルスコーニ首相の少女買春が政界を揺るがしているし、国の財政が行き詰まり、不安な国々もいっぱいある。世紀の大地震で22万人超の死者を出したハイチには、同情するけれども、目下の政争は非難されても致し方ない。独裁者のデュバリエ元大統領が25年ぶりに「この国を救済するために」帰国したと述べたのには、呆れ果てた▼200年前に初の黒人国として独立した名誉は、いったい何処へ飛んでいったのか。国の安全と治安のためにブラシルの軍隊が尽力し、自衛隊も震災の救護のために活躍し、孤児となった少女らを収容する施設を造ってもいる。こんな善意を無視しての争いなど誰も評価はしない。(遯)