ニッケイ新聞 2011年2月2日付け
30年以上続くムバラク政権打倒を訴える大規模デモなどが繰返されるエジプトの政変で、サンパウロに住む同国出身者が、現地との通信断絶や現地での食物や水不足などを恐れ、親戚の無事を心配していると1月31日付G1サイトなどが報じた。
エジプトでは、混乱8日目の1日も100万人規模のデモ実施など、不安定な状況が継続。国連では、25日から始まったデモ弾圧でこれまでに300人が死亡し、3000人以上が負傷した可能性ありと見ている。
エジプト専門の旅行代理店主でエジプト人のモハメド・ヨウセフ・モスタファさん(27)は、現地に住んでいる家族とブラジルに戻ってこられない旅行者が心配で、親戚に電話し、母国の状況を聞いたという。
モハメドさんは、「刑務所から逃げ出した犯罪者から身を守るため、若い人たちが家の前に立ち警備をしているが、母は家にも店にも食べ物がないと話している。事態は悪化する一方で、何をしたらいいか分からない。夜も眠れず、絶望的だ」と話した。
また、1月28日にカイロでの結婚式を予定していたブラジル人のタチアナ・カルドゾさんは、式場から治安が確保できないと連絡を受け、式をキャンセル。パーティーには約千人の招待客が集まる予定で、準備も全て整っていた。デモ発生時には、ブラジルからの友達や親戚30家族が現地入りし、ホテルに泊まっていたという。
反政府デモには様々な形でブラジルと関係のある人物も参加している。その一人は、サンパウロ総合大学(USP)大学院でブラジル文学を専攻したマゲジ・エウ・ガバリー氏。現在はエジプト国内の大学で教鞭をとるガバリー氏は、カイロで反政府デモ発生と聞くと同時に参加を決意。ブラジル政府も独裁政権反対の立場を明言するよう求めているが、ブラジルでは、ジウマ大統領が31日、他国の内政に干渉するべきではないとした上で、「同国が民主主義国家として立ち、国民が国の繁栄を享受できることを期待する」と述べている。
一部ブラジル人観光客は31日に帰国したが、同国にはまだ30人余りのブラジル人がおり、首都カイロのブラジル大使館も帰国希望者への支援を行っているという。
反政府運動はムバラク氏の退陣まで続くと見られ、各国政府や、航空会社、旅行代理店などは、エジプトからの出国を望む外国人支援のため、共同で活動している。