ニッケイ新聞 2011年2月2日付け
第11回南米日系農協活性化セミナーが先月26日からサンパウロ市内のホテルで開催され、最初は専門家、農協関係者らの分科会であったが、一般公開された28日にはロベルト・ロドリゲス元農務大臣、日本の人気ジャーナリスト池上彰氏らの基調講演に加え、ブラジルボリビア両国の日系農協代表者らによるパネルディスカッションが行われ、農協団結のメリット、日本への輸出の可能性等について議論が交わされた。エックス都市研究所、JICA(国際協力機構)の主催。ブラジル農拓協が後援した。
開会式後は、ロドリゲス元農務大臣による基調講演では、新興国の台頭、世界人口の増加に伴い食料需要は拡大する一方で、ブラジルの農業発展が世界から期待されている状況であると説明した。「日本人は農協組織という概念をブラジルにもたらしてくれた、それはとても重要なもの」と賞賛、参考にすべきものとした。
その次に、日本の混迷する現状と日伯関係の今後について、池上氏が冗談を交えて満席の会場を引き付けた。
午後は、池上氏が進行を務めたパネルディスカッションが行われ、安部順二下議や主要日系農協幹部が農協組織のメリット、日本へ向けた輸出の可能性を議論した。
1千600人の組合員を抱える小山ジュリオ・インテグラーダ農協副理事長(パラナ州)は、自前の工場で製品の加工を行い、販路を拡大している。そんな設備等を求めて新規の組合員が入ってくる状況であることを説明した。
比嘉武浩・コロニア沖縄農協組合長(ボリビア国)もパスタの製麺機械なども導入し、試運転が始まる状態という。また、坂口渡・トメアスー農協理事長(パラー州)からは同地のカカオを使用したチョコレートが明治製菓から発売されることを例に、環境保護の取り組みが付加価値となることを述べた。
池上氏は「科学的に安全と言われても、安心できないと消費者は受け入れてくれない。しかし逆にそれはブランド志向とも言え、それが確立できれば販路がある」と日本市場の特性を指摘。
欧州10カ国へメロン輸出を行う大谷正敏氏(北大河州)は、「日本への輸出は我々の夢であるが、相手が日本のみではコストの関係で無理。日系農協がまとまって1つの船を契約し、運賃を下げれば中国、インドを経由して日本まで商品を届ける事ができる」と農協団結によるビジネスの新展開を提案した。
そのためには、日本を含め経由する国々の需要を知る事が必要で、JICA、外務省、商社らとの情報交換がその可能性を増すのではないかと池上氏がまとめた。さらに大谷氏は「セミナーをやって終わりではなく、ここでできた横の繋がりを前に押し進めないといけない」と強調した。
講演会に参加した香林昭司グアラサイ・アバカシ生産者協会会長(サンパウロ州)は、将来は農協組織の発足を目指しているという。しかし会員の7割が非日系人であり、「組合の重要性への理解が難しい」と嘆きつつも、セミナーで農協の持つ力を再確認したとの感想を語った。