ニッケイ新聞 2011年2月9日付け
米国のティモシー・ガイトナー財務長官が8日にブラジルを訪問し、ジウマ大統領やギド・マンテガ財務相、アレシャンドレ・トンビニ中銀総裁らと会談したと9日付伯字紙が報じた。
昨年のヒラリー・クリントン国務長官に次ぐ閣僚級訪問者に選ばれたガイトナー長官は、18—19日に開催されるフランスでのG20財務相・中銀総裁会議準備と、3月に予定されているオバマ大統領の訪伯準備を兼ねて来伯した。
企業家や経済の専門家を交えたサンパウロ市での朝食会後、ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)での学生との交流を経て、ブラジリアに移動したガイトナー氏は、ジウマ大統領やマンテガ財相らとも会談。同氏が終始口にしたのは元を巡る中国の通貨政策やコモディティ価格の調整問題で、FGVでは、レアル高を招いた要因は、ブラジル経済の発展と高金利、自国通貨の価値を低く抑えようとする地域外新興国の通貨政策と説いている。
一方、米国が追加金融政策として6千億ドルという大量の通貨を市場に投入する前から、米国と中国が〃通貨戦争〃の鍵だと説き、昨年11月の韓国サミットでも米中の責任を問い続けてきたのがマンテガ財相だ。
その意味で、財相の心中には、中国が固定相場制を保ち元の価値を低く抑えている事がレアル高や外国投資流入を促進とのガイトナー氏の説は納得できても、中国のみに原因を帰しても〃通貨戦争〃は終わらないとの思いがよぎる。
これに対しガイトナー氏は、米国はここ18カ月連続して経済成長を遂げており、日本や欧州よりも順調に回復しているとマンテガ財相をなだめながら話合いを進めた。会談では、中国の通貨政策に対する意見交換と共に、フランスが提唱したコモディティ価格抑制案に対し、対立姿勢を打ち出す事が確認された。
マンテガ財相は、2010年の2国間貿易において、対米輸出が前年比23・7%増の193億ドルだったのに対し、輸入は32%増の270億ドルと完全な入超である事にも言及。両国間の貿易や投資の問題は大統領同士の会談の主要テーマともなる予定だ。
マンテガ財相との会談にはトンビニ中銀総裁やトーマス・シャノン駐伯米大使も同席。約1時間の会談後、ジウマ大統領とも会談したガイトナー氏は、会談後の記者会見で、今後の主要課題は両国間の関係改善と貿易・経済面での発展との見解を明らかにした。
オバマ大統領来伯時には、今回の会談などを準備した共同声明を両国首脳が揃って発表し、ブラジルやジウマ大統領の国際的な重要性を強調すると共に、両国関係がより強固なものとなった事を印象付ける狙いのようだ。