ニッケイ新聞 2011年2月23日付け
15日に始まったデモ以来、武力鎮圧などが続き、内乱状態に陥ったアフリカ北部のリビアで、21日から22日にかけ空軍戦闘機による市民攻撃も起き、ブラジルのアントニオ・パトリオッタ外相が「同国政府の武力鎮圧は容認できないレベルに達した」との見解を表明したと22日付伯字紙が報じた。政府としても、同国からのブラジル人脱出補助などの対応を急ぐ方針だ。
リビアの最高指導者カダフィ大佐は41年以上続く独裁統治者で、今回の反政府デモにも、徹底した武力鎮圧を行うとの考えを示していたが、低空飛行の戦闘機がデモ隊空爆、地上部隊も民衆に手榴弾を投げるという事態に、国際社会からの批判が高まっている。
チュニジアからエジプト、イラン、イラクなどのアラブ諸国に反政府デモが広がる中、41年以上独裁体制が続いていたリビアは、同種の動きが真っ先に起きても不思議がない国だった。
かつては数々のテロ事件を支援し、奇行でも知られたカダフィ大佐は、「中東の狂犬」とも呼ばれたが、03年のイラクのフセイン政権崩壊後は、大量破壊兵器の放棄を宣言し、米国との関係改善に乗り出すなどの柔軟姿勢を見せていた。
しかし、今回のデモ騒ぎで、国内では依然、報道管制その他、カダフィ氏への個人崇拝に基づく強権支配が続いていた事も判明。その一方、デモ発生以来、東部でのデモ鎮圧に外国人傭兵を派遣したのは、正規兵が寝返る事を懸念しているからとの情報もある。
従来も鎮圧隊が銃口を国民に直接向けていたなどの武力行使で批判されていた同国だが、今回の首都トリポリなどでの空爆発生では、閣僚や外交官の辞任、島国マルタに向かった空軍機2機のパイロットが亡命を希望など、軍や要人のカダフィ離れも表面化した。
一方、動くものは何でも目標という空爆が20分置きに頻発という事態に、国連安保理は22日に緊急会合を開催。アラブ連合も同日緊急会合開催の予定だ。同国の石油生産中止は国際的な影響を及ぼし始めている。
今月はブラジルが議長国を務める国連安保理の会合は、パトリオッタ外相が言及した翌日の実現だ。同国には、駐リビアブラジル大使館が19日に用意したチャーター便を逃し、船で退去する方法を探っている人など、約600人のブラジル人がおり、外務省も、別のチャーター便発着許可取得などのため、同国政府と交渉中だ。
反政府行動が盛んなベンガジ付近に187人の従業員がいる建設会社ケイロス・ガルボンでは、女性や子供を含む123人が即刻退去を希望。同社関係者以外の退去希望者も約30人いる。ブラジルにいる家族は安否確認に躍起で、ジョージ・N・デ・ソウザ・フェルナンデス在リビア大使は、22日にもベンガジのブラジル人らを訪問する予定だ。