ニッケイ新聞 2011年3月3日付け
2月27、28日に豪雨に見舞われたサンパウロ市で死者も出たと報じられた後の1日、リオ州などの南東伯や、マラニョンなどの北東伯でも水害が起きたと1、2日付伯字紙やサイトが報じた。サンパウロ州では、チエテ川やピニェイロス川の氾濫防止のため川の水をビリングス湖に逃がすための施設増強案も出ているが、夏の雨が市民生活を脅かす状況の改善は難しいようだ。
2月27、28日と連日の豪雨に襲われた大サンパウロ市圏では、チエテ川や市内を流れる川が相次いで氾濫し、各地で洪水や交通混乱などの被害が発生。1月の土砂災害で死者905人、行方不明者352人を出したリオ州山間部でも1日未明に強い雨が降り、ペトロポリスでは水にさらわれた男性が死亡している。
自然の脅威といえばそれまでだが、1日から強い雨に見舞われているマラニョン州は、各地で洪水や浸水が起き、雨の季節到来直後の1日だけで4千人が避難を要するなど、近年はその激しさを増しているともされる雨対策の遅れは全国共通の課題といえる。
ジウマ大統領が、就任直後に起きたリオ州災害で、援助資金払い出しなどを素早く決め、現地視察も行った事は賞賛を浴びたが、強い雨のたびに起きる洪水や土砂崩れ、交通混乱に経済損失といった問題は、常に行政担当者の頭痛の種だ。
2月末の雨で今年3度目のチエテ川氾濫が起きたサンパウロ州では、1日にジェラウド・アウキミン知事がピニェイロス川の水をビリングス湖に汲み出すためのポンプ増設に賛同する発言をし、物議を醸していると2日付エスタード紙が報じている。
ビリングス湖への排水は1992年に禁止されているが、川の氾濫や洪水回避のための排水は例外となるため、ポンプの数を現在の12機から15機に増やして、ピニェイロス川の氾濫を回避、チエテ川の流れもスムーズにするというのだ。
専門家はこの方法での氾濫回避は中期的な効果のみと言うが、問題は、大サンパウロ市圏人口の3割に飲み水を供給する湖に、雨水と共に流れ込んだ土砂や汚染物質なども流入する事。実施が決まっても機材購入や設置に手間取り、実際に機能し始めるのは2013年といわれる計画について、サンベルナルド・ド・カンポ市の環境担当者は寝耳に水と反発しており、合同協議は10日の予定だ。
同計画の本格化は今後の調整次第のようだが、洪水防止のための調整池設置も土地確保や工事が遅れるなど、計画書提出から実施までが遅れるのもブラジルの常。連日の雨で地盤が緩み、土砂崩れが心配、交通混乱で仕事に遅れるといった問題に直面する市民が枕を高くして眠れる日は遠そうだ。