ニッケイ新聞 2011年3月16日付け
三陸沖や茨城沖などで強い余震も続いている東日本大震災で、福島第一原子力発電所内施設の爆発や放射能漏れの報道が続き、ブラジルも含む複数の国で原発計画の見直しや反対運動が起きていると15日付伯字紙が報じた。日本に居る家族達と連絡が取れないと気をもむ人も多い中、ブラジル外務省が14日、日本への旅行を当面は中止または延期するよう指示を出した。
11日に起きた東日本大震災の影響はまさに世界大で、原発計画の見直しを求める声や貿易への影響を懸念する声などはブラジルでも広がっている、
原発問題に関してはある意味で日本よりも敏感なのが欧米諸国で、ドイツではより古い原発2カ所が当面閉鎖され、スイスでは新しい原発の建設許可を停止などの処置を次々に発表。原発は利用していないオーストリアも、欧州各国に安全検査をするように求めた。
一方、ルーラ前政権でアングラ3号機の建設工事を再開し、2030年までに更に4カ所の原発建設計画をたてたブラジルの場合、日本政府が福島第一原発周辺住民に避難勧告を出した様な警戒・警告態勢は整っておらず、アングラ原発でも、国際基準では最低限の半径5キロ以内の住民退避が定められているだけだ。
それでも、ブラジルの関係者は、ブラジルは地震が少ない上、日本より新しいモデルの原子炉を導入しており、日本で起きた様な放射能漏れや爆発事故の可能性はないというが、専門家は、アングラのモデルも、弁が正常に機能しなければ危険度は同じと発言している。
15日付エスタード紙によれば、ジウマ大統領は原発問題を優先事項とはみなしておらず、原発計画についての次回会合の日程さえ決まっていない。今後の方針は、日本の地震と原発事故のその後を見極めた後に検討される事になりそうだ。
日本に居る関係者と連絡が取り辛いという問題は完全には解消されておらず、安否が気遣われるが、15日朝には日本から帰国した人々を乗せた飛行機がまた到着。生後4カ月の女児無事救出などの報道に喜ぶ一方で、留学予定を中止する学生達も出ている。
一方、大震災後にトヨタやホンダ、日産などが生産を停止した事で、ブラジルへの自動車や関連部品輸出への懸念が拡大。国産率100%ではない車種の製造部門に影響が出てきそうだ。
また、日経東証株価が14日に6・2%、15日も10%余り下落するなど日本経済が混迷を極める中、その回復に注目しているのは、対日輸出の45・8%を占める鉄鉱石や12・6%を占める鶏肉他の輸出産業。鉄鋼生産量世界第2位の日本が足踏みすれば、鉄鉱石輸出は落ち込むが、食料部門は逆に輸出増加と市場関係者は見ている。