ニッケイ新聞 2011年3月16日付け
東日本大震災の被災者のために全伯各地で義捐金の募集が始まった。サンパウロ州の代表団体や県人会はもちろん、北はアマゾンから、サンパウロ州地方部のノロエステ線沿線、パラナ州、リオ州、サンパウロ州海岸部などで募金が検討中、もしくはすでに始まっている。「今回の地震はあまりに酷い。いてもたってもいられない。せめて義捐金ぐらい」と期せずして同時多発的に進んでいることが、ニッケイ新聞の取材で分った。今後、さらにこの募金キャンペーンが広がっていくようだ。
アマゾンでも募金開始
ブラジル宮城県人会の北伯下部組織であるパラー州都ベレン市にある「アマゾン代表支部」(角田善行エドゥアルド代表支部長)が中心になって、アマゾン地方でも東日本大震災への募金活動が始まった。トメアスー移住地でも賛同しており、集まり次第送金することになっている。宮城県人およびその子孫はベレンには約60家族、トメアスーには28家族もいる。
代表支部の書記、トメアスーの角田修司さん(69)は電話取材に答え、「地震発生以来、NHKにかじりついてずっと見ています。私の郷里塩釜はまともに津波を食らって大変な被害が出ています。こちらからいくら電話してもつながりませんでした」という。
しかし、日曜頃から徐々に情報が入るようになってきた。「千葉県に住む妹のところに、実家から連絡があったそうです。幸いなことに家が高台にあり、玄関まで水が押し寄せたが中までは浸水しなかったそうです。家族に怪我もなくホッとしています」と喜ぶ。
さらに「でも犠牲になられた多くの方々のことを思うと気の毒で、申し訳ないような感じで一杯です」と語った。
トメアスーでは一世が高齢化し、代表支部28家族の中でも二世、三世世帯が増えている。「母県と疎遠になっている世帯もありますが、まだまだ一世も。あそこもやられた、ここもやられたとテレビの報道を食い入るように見ています」
トメアスー文化農業振興協会(ACTA)の乙幡アルベルト敬一会長自身も祖母が宮城県人だった関係もあり、現地での募金活動開始につながった。
一方、角田さんの息子、同エドゥアルド代表支部長名で、宮城県国際交流協会にも見舞い状を出すことも検討している。ベレンとトメアスーの分をいっしょにして送金する予定だという。
立ち上がるノロエステ
サンパウロ州地方部のノロエステ連合日伯文化協会(白石一資会長)では、20日に予定されている定期総会で募金活動に関する提案が討議される予定になっているという。
白石会長(75、二世)は、「何県人とか言っていられません。船や車が木の葉のように流されていくあのニュース映像をみたら、何かしないではいられません。人間が入ったまま流されていく車の映像までありました」と報道に接した衝撃を語る。
「僕らにできることを何かせにゃいかんと思います。こういう時は、募金をあげる側にいることを神様に感謝せにゃいけません」と強調した。
1週間で集めるパラナ
「16日から本格的に募金活動を始めます」と力強く宣言するのは、パラナ州のリーガ・アリアンサの嶋田巧会長(78、二世)だ。傘下の70日系団体にお願いして一週間をめどに募金を集め、総領事館を通して日本の赤十字に送るように考えているという。
「最初は県人会ごとにという話があったんですが、ここは一つパラナとしてまとまってやったらどうだとお願いし、話がまとまりました」と経緯を説明する。
嶋田さんは「僕の両親、妻も北海道で親戚や日本にいる息子らには被害はなかった。でも親戚の娘が福島県双葉町の日本人のところに嫁いでいる。でも地震の後にすぐに避難し、幸いなことに原発が爆発した時にはもう離れていたと聞き、ほっとしています。でも原発まで5キロの所だって言うから、今後、いつ家に帰れるか分らないでしょうね」と声を落とした。
リオ日系4団体が合同で
リオ日伯文化体育連盟、リオ日伯文化体育協会、リオ日系協会、リオ商工会議所は14日、緊急会議を開き、日系4団体合同で募金活動をすることを決議した。08年の百周年の際に使用したブラデスコ銀行の口座を利用する。
「津波があんなに恐ろしいものとは…」と話す連盟の鹿田明義理事長によれば、「日本の家族と連絡がつかないリオ在住の会員も多い」という。
振込先は以下の通り。
COMITE DE EVENTOS COMEMORATIVOS BRASIL-JAPAO
BANCO BRADESCO, 237
AGENCIA: Santos Dumont, 0469-3
CONTA CORRENTE: 131.794-4
サントス厚生ホーム窓口に
サントス厚生ホーム(前園マルセリーノホーム長)では、サンヴィセンテ、プライア・グランデなど沿岸地帯からの義捐金を取りまとめる。3月末まで受けつけ、援協本部に委託する。
前園ホーム長によれば、「入居者がNHKの報道などを見て嘆きつつも『何かできないか』と相談を受けたのがきっかけ。直接持ってきてもらえれば責任を持って被災地に届ける」と話す。
問い合わせは厚生ホーム(13・3232・9615、担当=マリオまたはクリスチーナ)まで。