ホーム | 日系社会ニュース | 地震で岐路に立つブラジル人学校=震災のしわ寄せ外国人に=子供の不安な心情に理解を=ハタノ准教授が訴える

地震で岐路に立つブラジル人学校=震災のしわ寄せ外国人に=子供の不安な心情に理解を=ハタノ准教授が訴える

ニッケイ新聞 2011年3月17日付け

 近畿大学総合社会学部のリリアン・テルミ・ハタノ准教授が東日本大震災のしわ寄せがブラジル学校にきており、子供たちが不安な状況に置かれているとのメールを送ってきた。被災地近くのコンビニなどに食料品を納める会社などは大忙しの状況らしく、早く子供をブラジル学校に預けて仕事に戻るよう圧力をかけているという。非常時だからこそ多文化共生をとハタノ准教授は訴えている。以下、投稿文(編集部)

 震災後にブラジル学校関係者と話していて、叫びともいえる状況報告を聞きます。身体の不自由な方、高齢者、日本語が分からない人など多様な方が被災していますが、日本語がわからない人のことはあまりメディアで報告されていません。
 被災地周辺にはブラジル学校もあります。ブラジル学校協議会では78校あると言われています。地震後どの位の学校が本当に存在しつづけるのか分かりません。しかし今こそ多文化共生を考えるべきだと思います。
 私が把握している範囲ではブラジル学校の建物自体は今のところは大丈夫です。ただ地震後、あるブラジル学校の校長と話したら、企業、派遣会社、保護者からかなりのプレッシャーを感じているそうです。燃料不足の地域で、送迎が原則のブラジル学校の子どもたちを一日も早く預かってほしいというのです。保護者が仕事しなければならないから。会社の方は労働者がなければどうしようもないと言うのです。
 学校を一日も早く営業するようにという電話がくるそうです。燃料が制限されているのにどうすればいいのか。学校側からすれば、こんな状況で子どもをあずかっては責任が大きすぎるという気持ちもあります。
 ブラジル学校がある周辺の工場では飲食店、コンビニなどに商品を提供する会社は休めないというのです。確かに会社も生産を続けなければなりません。あらゆる処で外国人がこの社会を支えていることが案外見えていないようです。
 学校側はあらゆる不安を抱えて預からなければ経営が成り立たない、難しい判断です。非常事態で学校に確かな情報、多言語化した情報が届かない状況があります。
 地域差はあるでしょうが「原発は本当に大丈夫? どうすればいい?」と訊いてきます。私も「とにかく落ち着いて周りの関係者としっかり話し合うように」というしかない。親自身も不安な状況ですが、不安を抱えている子どもの存在を忘れないでほしい。
 震災後、一日も早く日本を出て行きたいと思っている保護者も多くいます。同学校経営者も、先生が相次いで辞めて行けば「教育の質」も保てなくなり、学校を維持できなくなります。
 もしブラジル学校が全部閉鎖されたら、日本の学校が本当に暖かく迎え、保護者も安心していられるでしょうか。今こそ外国人学校が果たしてきた社会的な役割は極めて大きかったと理解できると思います。
 在日外国人向けに個人的に情報提供を続けるのは、とても手に負えない問題です。限界です。このようなことをやっていて意味あるのかとすら疑問を感じてきました。
 ブラジル学校をはじめとする外国人学校の状況をぜひ総括的に考えていただき、保護者が安心して生活し、社会を支え続けられることを願うばかりです。
 子どもたちは本当に不安な状況です。「外国人からの献金問題」後、自分の立場を思い知らされました。外国人をふつうの人間として受入れる理解者が増え、共にこの社会をささえ続けて行くことができるよう願いたいです。