ニッケイ新聞 2011年3月18日付け
東日本大震災で原子炉格納容器の損傷や放射線漏れなどが起きた福島第1原発について、欧米諸国が、放射線量は極めて高い、危険度は大事故に相当など、厳しい評価を行っていると17日付ブラジルメディアが報じた。ブラジルテレビでは、核爆発時の被爆回避法まで紹介するなど、日本側の報道とのギャップに戸惑いを覚える人も多いようだ。
いたずらに不安を煽ってはならない—。日本人には解り易い考えだが、福島第1原発事故では、国内外の報道の差に日本政府への不信感や住民の不安が高まるなどのマイナス面もでている。
例えば、原発周辺の放射能量は、1号機の建屋爆発前にも増加していたにもかかわらず、放射能漏れの原因説明はない。原子炉格納容器は無事と発表されたが、その後も3号機の建屋が爆発。2号機についても、放射能量が増え、格納容器損傷の可能性ありと言っただけで、詳細な説明がないまま爆発に至った。
17日付エスタード紙は、2号機爆発後の15日以降の放射線量急増を示すグラフや1〜3号機の収納容器や使用済み核燃料プールは損傷したとする表を掲載。米原子力規制委員会(NRC)グレゴリー・ヤツコ委員長は16日、米国議会で、福島第1原発原子炉で、使用済み核燃料収納プールの水が完全になくなり高レベルの放射能が漏れたと発言した。
国際原子力機関(IAEA)は、制御不能と言うにはまだ早いが、状況は極めて深刻で、原子炉は甚大な損傷を受けているとの見解を発表。18日に天野之弥事務局が現地を訪問後、来週初めにウィーンの本部で緊急理事会を開催する。
IAEAや医師、原子力技師らは、福島原発事故の最大の脅威は、鋼鉄やコンクリートで覆われてないプールに保管されている使用済み燃料と発言。使用済み燃料棒が露出すると、プールの端に居る作業員は致死量の放射能を浴びるという。
17日の自衛隊ヘリで海水を投下し原子炉を冷却する作業についても、同日朝のブラジルテレビは、放射線量低下はほとんど起きていないと報道。
最悪の事態発生時は窓がなく何層もの壁に覆われた所がより安全で、コンクリートや土の層に覆われた地下鉄構内は理想的などの被爆回避法紹介には、ブラジル報道機関の危機感さえ伺われる。
ブラジルの報道は国際社会の動きに倣ったもので、原発から20キロ以内に避難、30キロ以内は屋内退避を勧告した日本政府に対し、米国は、原発から80キロ以内の自国民により遠くへの避難か屋内退避を勧告した。東京での放射性物質確認後はルフトハンザ機や中国航空機が成田への乗入れを停止。英国やオーストリア、ドイツが自国民に原発周辺や東京を離れるよう勧告など、成田や羽田の混乱は拡大中だ。
伯外務省も危険地域への旅行回避勧告し、19日には仙台、女川にブラジル人退避用バスを派遣する。