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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年3月18日付け

 グローボTV局の日本特派員ロベルト・コバリッキ(Roberto Kovalik)は東日本大震災後に、いち早く現地仙台からの実況中継を行った。日本人が冷静さを保ち、まったく治安が乱れずに維持されている様子に感嘆するなど、ブラジル人らしい生の声を毎日伝えてくれている。日本を分かりやすく伝え、一般ブラジル人の共感を呼ぶ役割を果たしており、いずれコロニアから顕彰してもいい存在だ▼彼のコメントの中でも特に印象に残っているのは、「あれほどの目を覆いたくなるような惨状にも関わらず、仙台市民の中にはきちんとゴミを分別して捨てていた人がいた」と驚いた様子で語っていたことだ▼95年に起きた阪神淡路大震災の時に被災した神戸新聞の記者に、後から体験談を聞いたことがある。「一瞬何が起きたが分からなかった。とにかく凄い地震だということは分かったが、何をしたらいいか分からないから、まずは出勤しようと思った。特別なことをするより普段やっていることをする方が、気持ちが落ち着くから不思議だ」といっていた▼おそらく仙台でゴミの分別をしていた人も、気持ちを落ち着けるためにそうしていたのだろう。心がひどく動揺している時は、わざと身体に日常の動作を繰り返させることで、心理状態を安定させられるようだ▼それにしても地震、津波、原発事故、雪と畳みかけるように続く被災地の苦悩を想うと、胸が痛くなり言葉にならない。海外の日系社会が一斉に支援に立ち上がったことを日本に伝え、少しでも元気付けられればと思う。コロニアからエールを送りつつ、最悪の事態にならないよう祈るのみだ。(深)