ブラジル国内ニュース
ニッケイ新聞 2011年3月22日付け
対イラン政策の差などで悪化した伯米関係の改善を求め、19日に来伯した米国のオバマ大統領は、20日のリオ市立劇場での演説でもそのカリスマ性を発揮し、聴衆の心を掴んだと21日付伯字紙が報じた。別のテーマの話も聞きたかったとの声は残ったが、ジウマ政権の外交政策の変化と米国側の積極的な働きかけで、両国関係は一段と親密化しそうだ。
「オラー、リオデジャネイロ! アロー、シダーデ・マラヴィリョーザ!」—。2千人余りの会衆を前にリオ市立劇場に響いた第一声はポ語。米国初の黒人大統領の演説はわずか21分だったが、話術に長け、親近感とカリスマ性を感じさせる演説は、多くの会衆の心を捉えた。
19日の到着時から、各種メディアが間断なく流す同大統領の言動の中でも、最も関心を集めたのはこの演説だろう。
ブラジルに出発する直前にリビアへの最後通牒を突きつけて機上の人となったオバマ氏だけに、反米デモや同国に対する国際的な軍事介入に反対する人々によるテロ行為が案じられ、当初予定されたシネランジアでの公開演説会が市立劇場での限定会衆向け演説となったものの、時には笑いも誘いつつ、アメリカ大陸の2大民主主義国家の共通点や、両国が負う役割などをとうとうと述べた。
米国大統領としては初めて、ブラジルを中国やインド同様、対等な立場の国として扱い、国際社会で重要な役割を負う国と表現したオバマ氏は、民主主義こそが全ての人に恩恵をもたらしつつ、国家に成長と繁栄をもたらす事を繰返し主張。「ブラジルは軍政が民主主義に移行しうる事を証明する国」と賞賛した。
その冒頭、ヴァスコやボタフォゴの試合や、リオ市のファヴェーラでのカーニバルを扱った映画『黒い孤児達』を母親と見た記憶などに触れて会衆の心を掴んだオバマ氏は、自然の美しさや大航海時代の大陸発見、欧州からの大量の移民流入、奴隷制克服など、両国の歴史上の共通点を列挙。
その後は、ブラジル独立を最初に承認したのは米国で、ドン・ペドロ二世は独立直後に米国を訪問した、第2次世界大戦の時は同盟軍として戦場に立ち、大戦後は共に自由の恩恵を追求中と、両国関係の緊密さを説いた。
軍政下に人権の大切さを守ろうとして投獄や迫害も経験した女性が現在のブラジル大統領となり、貧しい出自の少年が金属工を経て国家元首にまでなり得たのもみな民主主義のなせる業と、現、前大統領にも言及し、中国やアラブ社会への警鐘を鳴らす事は忘れなかった同氏だが、地球温暖化などのテーマへの言及も望んでいたマリーナ・シウヴァ氏らには物足りなさも残ったようだ。
伯米関係の改善を求めミシェル夫人や二人の娘も同伴して来伯したオバマ大統領一行は21日、良い感触を得て、次の訪問地チリへと旅立った。