ニッケイ新聞 2011年3月29日付け
28日付エスタード紙によれば、サンパウロ市の地下鉄2号線(緑:ヴィラ・マダレナ〜ヴィラ・プルデンテ)は、ピーク時の平米当たり乗客数が6・5人となり、快適度も低下し始めている。ABC地区からパウリスタへの交通簡便化などの謳い文句の一方、W杯などの大型行事で人の動きも大きくなる前から飽和状態になりつつある交通手段に懸念の声も出てきそうだ。
サンパウロ市地下鉄4号線(黄色)ブタンタン駅開業のその日に掲載された記事が、2号線は満員状態というものである事は、長期的な見通しが利かないというブラジルの弱点を覗かせるに足る出来事だ。
サンパウロ市地下鉄で最も込んでいるのは東西に走る3号線(赤)で、ピーク時の平米当たり乗客数は、2008年の平均で9・2人。南北に走る1号線(青)も同時期に7・6人を記録し、現在は両線とも平米当たり10人に達する事もあるから、2号線の6・5人はまだ良好だが、それでも国際的な快適基準の6人は既に突破。この数字がヴィラ・プルデンテ駅とタマンドゥアテイ駅の営業時間延長直後のもので、今後も増える可能性が強い事も懸念材料だ。
19日からのヴィラ・プルデンテ駅とタマンドゥアテイ駅の営業時間延長の影響は、3月初旬に1日51万9千人を記録した同線乗客数が、営業時間延長後は1日54万3千人に増えた事でも明らか。2009年3月の41万6400人と比べれば、近郊電車CPTMを使うABC地区などの利用者増も顕著だ。
パウリスタ地区の駅ではピーク時に2、3台待たされる事も多く、09年〜10年にかけての乗客の満足度は88%から84%に落ちている。
これに輪をかけると思われるのは、今後の人口増加や15号線(白)が開業すればサンパウロ市東部からの乗客もヴィラ・プルデンテ駅で2号線と乗換え可能になる事などで、地下鉄網拡大の度に満足度低下の可能性もある。
計画立案の時点ではこんなに早く飽和状態になるとは思っていなかったという声はどの線でも共通だが、将来の見通しが簡単に狂うのは、長期計画をたてるのが苦手な国民性故でもある。
26日付エスタード紙には、4、6歳児も全員就学させるには全国で10万人以上の教師が不足との記事もあり、現在も教師不足なのに就学対象を増やし、半日制を全日制にしたがるなど、行政が現場の状態を把握していない事を物語るような報道も続いている。
何かを始めるには、理想を語るのみならず、現状を知りかつ将来を見通す事が必要だが、リオ州山間部などの被災地復興やW杯準備の遅れは短期目標しか立てられないブラジルの文化故で国も個人も同様との28日付フォーリャ紙記事が事実なら、飽和状態解消のために拡張式のいたちごっこはいつまでも続く事になる。