ニッケイ新聞 2011年3月30日付け
インフレ圧力となる消費抑制のため、個人や企業の融資利用を抑えようとする中銀の試みにも関わらず、2月までの12カ月間の融資利用は前年同期比で21%も増え、中銀は新たな抑制策をとる必要に迫られていると29日付エスタード紙や同日付サイトが報じた。
29日付エスタード紙経済欄は「中銀が抑制を試みるもクレジット高止まらず」の見出しで始まっているが、それを裏付けるように、中銀が同日、2月までの個人、企業向け融資残額は過去12カ月で21%増え、国内総生産(GDP)に占める割合は過去最高の46・5%と発表した。
インフレ抑制のため、昨年末から預金準備率や政策金利(Selic)の引上げといった方策を採っている中銀の期待を裏切るような融資額増大で、2月末現在未返済の融資額は1兆7400億レアル。1月よりも1・3%増えたという。
先週のトンビニ中銀総裁の「融資増は10〜15%であるべきで、15%以上は適正値とは言い難い」という言葉からすれば、融資残額が1年で21%増という数字は傍観を許さないものだ。
個人融資の中にはクレジットカードの使用なども含まれており、消費熱が相変わらず高く、今後のインフレ抑制が困難である事も伺わせる内容だが、融資拡大には、中銀の政策金利引上げや、国外からの融資への金融取引税(IOF)引上げを先読みした、投資家による駆け込み投資の影響もあったという。
融資や投資増大の背景には、国民所得の向上など、肯定的な要因があるものの、過熱する国内消費を満たすための輸入増加やレアル高は、外国旅行やそれに伴う国外支出の増加も招き、国際収支の悪化にも直結する。26日付エスタード紙によれば、今年1、2月の外国旅行に伴う支出は昨年同期の38%増となり、29日のIOF引上げを決定付けた。
IOFの引上げは、国外での支払いにクレジットカードを使った場合の返済額増加などといった結果も生むため、中銀などは、融資やローンの返済が滞る債務不履行の増加も懸念。従来は〃支払い不能〃の言葉を使わなかった国税庁関係者が債務不履行への懸念を口にしたとの記事も、国民への注意勧告といえる。
そういう意味で、国民が最も好むのは現金払いという報道は安心材料だが、それでも、個人融資は12カ月で19・6%増加し、車購入のためのローン利用も18・2%増加との数字が報告されている。
国庫資金確保のためには税収を減らさない工夫も必要だが、財務省などが採る金融政策とのバランスを見つつインフレ抑制を行う立場の中銀は、外国投資の融資流用を図る銀行と、融資やローン利用に慣れた消費者のコントロールという難事業にも直面している。