ホーム | 日系社会ニュース | ブラジル野球に高い評価=大リーグがエリートキャンプ=補助金カットの苦境の中=佐藤コーチ=「大きなアピールになった」

ブラジル野球に高い評価=大リーグがエリートキャンプ=補助金カットの苦境の中=佐藤コーチ=「大きなアピールになった」

ニッケイ新聞 2011年3月30日付け

 大リーグ野球機構(MLB)の国際野球振興部(マイク・マッククレーラン部長)が主催する「ブラジルエリートキャンプ」が2月21日から25日までの日程で行なわれ、ブラジルの50人を中心にエクアドル、ペルー、アルゼンチン、パナマなど南米諸国から15〜17歳の選り抜き選手が参加した。同キャンプはブラジルで初の開催。ブラジル野球連盟が共催した。

 今回、指導のため5人の元メジャー選手が来伯。ワールドシリーズ優勝経験者、球団の殿堂入りを果たすなど輝かしい経歴を持つ一流選手たちだ。最終日にサンパウロ市ボン・レチーロ野球場で行われた公開練習では記者会見が行われ、集まった各メディアからの質問に答えた。
 メジャーリーグで12年プレーしたエリアス・ソウザ元投手はエリートキャンプ開催の目的を「野球の世界への普及と有望選手のスカウト、野球周辺事業の育成」である事を説明した。同キャンプはヨーロッパ、オーストラリア、中国など将来性ある国で開催されており。南米ではブラジルを皮切りに普及を図る考えという。
 ブラジル人は野球に向いているのか、との質問には「サッカー文化があり足が早い。野球をすればいい選手になる」との答え。その他にも様々な質問がなされた。
 キャンプでは午前中に基本練習、午後に練習試合のメニューを繰返し、講義形式でテーマごとのセミナーも行われた。練習中はメジャー10球団のスカウトの目も光った。
 ブラジル側の選抜コーチとして参加した佐藤充禧さん(64、愛知、ヤクルトベースボールアカデミーコーチ)によれば、マイク部長はキャンプ後、「ブラジルの選手たちは礼儀正しく、質問のレベルも高い」と評価、選手発掘の場として資金の投資先に適しているとの話も出たという。
 野球は2008年にオリンピックの正式種目から外れ、同時に国からの補助金は全面カットされた。アマチュアスポーツにとっては大きな影響で、以来国際試合も資金不足で出場を断念し、競技人口の減少にも繋がっているという。
 そんな中で、「今回のキャンプは大きくブラジル野球の存在をアピールしたことになる」と佐藤コーチ。「メジャー選手の指導が行われたのは初めて。選手らの刺激、喜び様は大きかった」と成功を喜んだ。
 JICA青年ボランティア派遣でサンパウロ州インダイアツゥーバで野球指導を行う黒木豪さん(25)も特別にキャンプに参加、「メジャーリガーは気さくになんでも教えてくれる。壁を感じなかった」と感心した様子だった。
 スカウトらの関心も高く、5月頃の国内大会後に実際のスカウト話も出てくる可能性があるという。
 当日は午後から参加者がチームに分かれて練習試合が行われ、晴天の空の下ハツラツとしたプレーが見られた。