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ブラジルの信用格付上がる=外国投資の流入増加か=更なるドル安懸念の声も=国内産業の保護が課題に

ニッケイ新聞 2011年4月6日付け

 世界的な信用格付会社フィッチが4日、ブラジルの信用度をBBB−(マイナス)からBBBに引き上げたと5日付エスタード紙が報じた。国際的な金融危機前に付けられた評価の引上げには、危機後の経済回復の他、ジウマ新政権が税制改革も含む経済政策をアピールした事がプラスに働いたようだ。

 世界的な信用格付会社3社の中でブラジルの信用度を最初に引き上げたのがフィッチだが、中程度の信用度を表すBBBという評価は、外国人投資家達にとって、資金投入後も債務不履行などの問題に巻き込まれる危険性が低い事を意味する。
 このBBBという評価は、ロシアやリトアニアと同レベルで、インドやペルー、ギリシャよりも上位だが、ヨーロッパで経済的な危機に直面しているアイルランドやスペインよりもまだ低い。
 景気が好調だった2008年上半期に得たBBB−の評価が、BBBに引き上げられ、国際的な信用度がより高まったのは歓迎すべき事だが、その一方、政府関係者が懸念するのは、外国投資が一層増えて、ドル安、レアル高が進む事だ。
 新しい評価が発表された4日の為替レートは1ドル=1・609レアルで、2008年8月8日以来の最高値。レアルが高くなると、国外から輸入するものは安く買えるようになるものの、国内で生産、製造したものの輸出は一層困難となり、国内市場での競争力低下にも繋がる。
 マンテガ財相も4日、信用度上昇は喜ぶべきだが、この状況ではドルの流入が増えるとし、今後も為替の不均衡是正のための政策を取り続けるとの意向を表明。
 トンビニ中銀総裁も、経済政策やインフレ抑制の成果、変動相場制の継続、外貨準備高の増加、金融政策の独立性などが総合評価された結果と歓迎しつつ、今後も通貨政策に力を入れる旨、文書で表明した。
 ただ、現在の世界経済を見た場合、昨年までデフレを懸念していた先進国も、急速に値上がりした原油を始めとするコモディティ価格の上昇などに起因するインフレに脅かされているのが実態。しかも、外貨流入に歯止めをかけるために金融取引税を引き上げても、その直後もドル安傾向が続くなど、経済の舵取りが難しくなっている。
 ブラジル国内では、3月30日に中銀が、今年の経済成長予想を4・5%から4%に下方修正する一方で、インフレは5%を5・6%に上方修正。市場ではインフレは6%に達し、4・5%という政府目標は来年以降でないと達成不能の声もある。金融、通貨政策に疑問の声が高まる中での信用格付引上げでは、経済スタッフが手放しで喜べないのも当然の事だろう。