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軍政下の情報入手簡便に=行方不明者家族に朗報=上院は米州機構の協約承認=「軌道修正」の言葉を反映

ニッケイ新聞 2011年4月8日付け

 法務省が、軍政下の迫害や行方不明者などに関する情報へのアクセスを簡便化し、6日付官報に詳細を掲載した。軍政時代に殺害されたり行方不明になったりした人のいる家族の間では、情報入手が簡便化された事で事実解明などが進むとの期待が膨らんでいる。

 1964年から1985年の軍政時代、当局によって逮捕、投獄され、拷問などを受けた後に殺されたり行方不明になったりした人については、いまだにその真相が解明されないままという例もあり、当時の情報入手の簡便化は、長年の要望事項の一つだった。
 6日付官報で報じられたのは、軍政時代の情報やその反証などを管理保管していた国家情報反証システム(SISNI)に登録されていた情報開示手続きの簡便化だ。
 開示請求者の資格などが従来の規定より明確にされ、申請書類の種類も削減などの処置により、情報を得たくても不明者との関係を証明する方法がなく、涙を呑んだ人などにも情報入手への道が開かれた事になる。
 だが、開示手続きの簡便化だけでは、真相解明には不十分と唱える人達がいるのも確かだ。政治犯扱いをされて死んだり行方不明になったりした人の家族会メンバーで、1973年から行方不明となった親族3人の情報を求めているマリア・アメリア・デ・A・テレスさんによれば、開示請求が簡便化されても、国家情報の全てが手に入る保証はないという。
 6日付G1サイトによると、テレスさんは、開示対象となる情報の範囲が拡大され、家族や親族が、どこで誰によって逮捕され、どこに収監されてどんな扱いを受けたのかなどの全貌が明らかにならなければ、家族会メンバーは得心しないと強調している。
 一方、5日付G1サイトによると、5日夜、軍政下での殺害や失踪事件を起こした者への懲罰を定めた米州機構の協約を上院が承認した。ブラジルも1994年に署名した協約は、2008年に下院で承認され、上院審議にかけられていたもの。アルゼンチンやボリビア、コロンビア、コスタリカその他の中南米諸国では既に発効済みだ。
 軍政下で国民の自由を拘束した当事者を罰する協約は、国の命令で動いた軍人にも懲罰が及ぶ可能性が強いため、前政権来の真相解明委員会設置への動き同様、軍部の反発が予想されたが、6日付伯字紙によれば、5日に3軍の司令官や昇進将校との式典に出席したジウマ大統領は「ブラジルは国としての歩みを修正し、法的にもより成熟した国家となった」と演説。軍政下で迫害された経験もある大統領の「整備、訓練された軍の存在は過小評価されてはならない」との言葉には軍人達も満足の意を表したという。