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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年4月8日付け

 ここ一週間ほどで立て続けに、百周年を機に復活した日系団体に遭遇し、深い感銘を受けた。サンカルロス日伯協会とウバツーバ日伯文化協会だ。今は、長い黄昏を経た「生まれ変わりの時」なのだと感じる。双方とも一世中心の活動を90年代に停止させ、百周年の前年から二世層を中心に再出発した▼おもえば90年代半ばにコロニアは続けざまに屋台骨を失った。デカセギブームによって青年層がこぞって訪日就労し、空洞化が騒がれた。あの時、日系団体の幾つかは蝋燭の火が消えるように静かに息を引き取っていたのだ▼百周年というブラジル社会を巻き込んだ巨大イベントは、それまで無関心だった二世層に「自分たちも日系人として何かお祝いせねば」との自覚を呼び覚ました。同様の経緯を経た日系団体は数多くあるに違いない。百周年が残した最大の遺産はこの〃自覚の覚醒〃かもしれない▼最初からポ語の世界としてスタートしている点が興味深い。従来、一世は言葉が分らないから親睦と相互扶助のために団体を作ったが、二世は言葉に問題ないから助け合う必要がなく団体に入らないと言われてきた。それが見事に否定された▼今のブラジル社会は文化的な多様性を尊重する気風が強い。「日系人は日本文化という特性、個性を持っている」とのイメージが一世の努力で一般社会に定着しており、二世はそれに応えようとしている▼一世から直にバトンタッチできなかったことは無念だが、再生の動きは歓迎すべきだ。一世が多いサンパウロ市周辺より、地方部の特徴かもしれない。再生団体においては現リーダーの子供の時代、この先半世紀は続くに違いない。(深)