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問い返される銃所持拡大=管理出来ない事が問題=乱射事件の武器はどこから=治安維持と犯罪分離が鍵

ニッケイ新聞 2011年4月9日付け

 【既報関連】7日朝、リオ市西部の公立学校で起きた銃乱射事件は、学校内で起きた殺害事件としては最悪の12人の死者を出し、学校の治安維持や銃所持に関する論議に再び火をつけた。前歴のない青年がどうやって拳銃や大量の銃弾を入手したのかなど、真相解明はまだ十分ではないが、下院治安委員会が扱う17プロジェクト中11件が銃の使用拡大を図るものという実態にも改めて警鐘が鳴らされている。

 銃声がリオ市を、ブラジルを、世界を止めた—。23歳の青年が母校の後輩達に銃を向け、12人を殺害、13人に負傷させるというブラジル史上最悪の大惨事は、7日のメディアを独占。人々の目を釘付けにすると共に、一気に世界を駆け巡った。
 事件の知らせを受けたジウマ大統領は、予定されていた行事も早めに切り上げ、リオ州知事やリオ市長らに連絡を取る、人権局長官をリオ市に派遣するなど、手早い処置をとったが、大統領自身も涙する様子などは、事件同様、外国メディアで取り上げられた。
 事件の反響は大きく、8日付伯字紙も第1面はリオの乱射事件がトップで扱われ、市立タッソ・ダ・シウヴェイラ学校の塀の外には、死亡した生徒一人一人の名前を添えた鉢植えの花や十字架、ローソクが飾られた。
 被害者の葬儀にはリオ市長らも参加。遺体は8日に埋葬されたが、8日も入院中の10人の中にも重体の生徒が居り、事件の衝撃を乗り越えられずにいる人は数多い。
 犯人が自殺した事もあり、真相の解明はまだだが、学識経験者らは、犯行に使われた2丁の拳銃と大量の銃弾、回転式の銃に6発の弾を一度に装填するスピードローダーと呼ばれる装置の入手経路や、犯罪歴のない人物がどうやって拳銃の扱い方を身につけたかなどにも疑問を呈している。
 一方、このような事件の度に懸念の声が挙がるのはブラジルの銃所持やその管理のあり方で、一般人向けの銃所持規制強化の動きに対し、道路警察や警備員などの銃使用拡大を求めるプロジェクトが下院に11件も提出されていながら、管理強化策が採られてないなどの指摘が再度出ている。
 5年毎に交換される警官用の銃もその後の処理や管理が不十分で紛失も多いため、7日付G1サイトは、国産の警察用の銃器が横流しされた可能性を説く声も掲載。
 今回のリオの事件で使用された銃の一つは番号が削られており、同種の銃の可能性がある。もう一丁は、18年位前に盗まれたもので、元の持ち主は既に死亡。青年の入手ルートは不明だが、治安維持や向上を謳って銃の使用拡大を図るなら、犯罪者に凶器が渡るのを断ち切る方法や学校の警備体制の確立も必須だ。