ニッケイ新聞 2011年4月14日付け
ブラジル生長の家最大の年中行事、宝蔵神社大祭が10日、サンパウロ州イビウナ市の宝蔵神社で厳かに行なわれ、全伯各地はもとより遠く中南米からの来場者も含め、1万6402人が参拝した。中南米、アフリカのアンゴラ、欧州のスペイン、ポルトガルなどからも亡くなった信者とその縁者の氏名を記した霊牌(紙片)が郵送され、前日から計253万9777柱(はしら)全員の名前が読み上げられ、丁重に合祀された。昨年からインターネットの生中継が始まり、今年の第55回大祭の様子は、全伯の教化支部904カ所で1万人以上が、国外13カ国の幹部約250人がネット越しに世界規模になった同儀式に参加した。
イビウナ郊外にある南米練成道場内には1957年4月に、大国主命を主神とする宝蔵神社が建立、鎮座祭と共に合祀祭が挙行されて、それが現在の大祭に発展した。「当初は霊牌も少なく参拝者も多くなかったが、教えが広まるにつれ先祖供養の習慣のないブラジル人信者も参加するようになり、現在のように増えた」と円環前編集長の門脇和男氏は説明する。
当日はバス184台、普通車1636台などに乗って集まった信者により、朝9時半には境内や大講堂脇などに設置された3基の屋外大画面装置の前までのあらゆる空間がびっしりと信者で埋まった。大講堂内では前日から2日掛りで500人が机に座って次々に霊牌の名を呼んで招霊していた。
前日から降り続いていた豪雨が早朝にピタリと止んで晴れ上がった空の下、神社前の数カ所には生中継用カメラが設置され、向芳夫ラ米教化総長が開会の言葉の中で神社の由来を述べ、「この儀式の重要さを肌身で感じ、持ち帰って伝えて欲しい」と語りかけた。
全員で「聖歌」を斉唱し、宇宙浄化の祈りを捧げ、全伯の代表者が拝殿に集まって本殿の扉を開けた。祈願文と祭文が読上げられ、昨年亡くなった47人の各地の講師名と一般の招霊も行われ、「御霊に」と主神に奏上された。参拝者は整然と列に並んで境内にズラリと設置された香炉で次々に焼香し、霊牌奉安、御霊鎮めの儀の後に本殿は閉じられた。
最後に村上真理枝理事長は参拝者に向かい、パラナ州アサイ市の講師で宮大工だった故藤原七郎氏が奉仕で建立し、その時に木材搬入の指揮をしていたのが青年時代の向総長であるとの歴史を語り、「この素晴らしい日のために拍手を!」と呼びかけ喝采が送られた。
午後2時からは、第26回流産児無縁霊供養が執り行われ、参拝者全員が聖経「甘露の法雨」を読誦した。向総長は1986年の第2回供養での不思議なエピソードを紹介した。「聖経読誦が始まると、突然スピーカーから幼児の賑やかな歓声が流れ出した。総務ではどこかのマイクの前に子供の集団がいるのではと必死に探したが見つからず、音響担当者は途方にくれた。しかし、読誦が終わる頃にその声は潮が引くように消えた。きっとそれまで苦しんでいた流産児無縁霊の喜びの声だったのである」。
モジから5回目の参拝にきた下里総一郎さん(68、二世)は「家族一同、4月を待ちかねている。喜びが湧いた」、カンピーナスから来たイヴァンダ・サントス・アウドラデ・バルボザさん(39)も「儀式に参加して、心の平安を感じ、ご先祖様への感謝の気持ちが湧いた」、サンパウロ市在住のマルシオ・サントスさんも「キリスト教会にも通っているが、先祖崇拝はここでしかできない。より充実した信仰の形がある」、やはりサンパウロ市在住の下本フミコさん(74、二世)も「清々しい気持ちになった」などと述べた。