ニッケイ新聞 2011年4月15日付け
中国を訪問中のジウマ大統領は、13日のBRICS首脳会議後、同グループは他の国や地域と対立するものではなく、世界の多極化を望んでいると発言した。中国との2カ国間交渉に続く5カ国首脳会議では、旧態依然の国際機関などの改革を呼びかける共同声明が採択されたという。
13、14日付伯字紙や各紙サイトによると、中国との合意調印後の13日を史跡訪問などで過ごしたジウマ大統領は、14日に、海南省三亜で開催されたBRICS首脳会議に出席した。
今回の会議には、南アフリカも正式メンバーとして参加。昨年のブラジル会議ではオブザーバー的存在だった南アフリカの参加で、BRICSの範囲や政治的発言力拡大との見方もある一方、BRICSの目的や何を基盤として立つのかなど、具体的なところが見えてこないのも実態だ。
今回の会議議長国は中国で、共同声明で国際的な通貨体制や金融のあり方の見直しもと謳いながら、価値低下で世界的に論議を醸しだしている人民元に関しては言及を避け、今週末に開かれる国際通貨基金(IMF)会合や、フランスでのG20に論議を託した。
このIMFもBRICSが改革を叫ぶ対象の一つで、共同声明では、国連などの国際機関での新興国の発言力拡大も課題の一つとされている。
中国とロシア以外のBRICS諸国は皆、国連安保理の常任理事国の座を望んでいる中、国連改革の言葉が持つ意味も各国各様だが、常任理事国入りを悲願とするブラジルにとり、中ロ両国の「新興国の発言権増強」の言葉は外交辞令ともいえ、パトリオッタ外相も、インドや日本の常任理事国入りを望まない中国には、ブラジルの常任理入りに本腰を入れる意思がないとの見方を口にしている。
会議では、BRICS間での現地通貨取引採用の意向確認と、高インフレやバブル形成への警告も発せられた。リビアへの武力投入への懸念、国際組織改革の呼びかけなどで合意を得た一方、各国間で、項目毎の温度差も目だったようだ。
また、14日朝のグローボ局の番組で、解説者のミリアン・レイトン氏が、中国はアフリカで西欧の植民地政策的な行動を取っており、強大な経済力を持つ中国企業が現地資源などを乱開発して利益を得るのに対し、現地への恩恵は少ない事が世界的な論議を呼んでいると発言。同日付エスタード紙には、工業国中心の経済の中心座標軸に位置する中国と、原材料輸出に頼る周辺国に入るブラジルとの交易交渉は、益となるよりも脅威となる部分が大きいとのジョゼ・セーラ氏の論説、同紙サイトには、BRICS諸国の力関係のアンバランスを指摘しつつ、ブラジルは一次産品以外の競争力強化が必要と説く応用経済研究院関係者の記事も掲載されていた。