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ブラジルのとるべき手段は?=中南米の景気過熱の中=新興国のインフレに警告=政策金利引上げ避けられず

ニッケイ新聞 2011年4月19日付け

 15日からワシントンで開催されていた国際通貨基金(IMF)秋季会合で、ニコラス・エイスギーレ西半球局長が、ブラジルを始めとするラ米諸国では景気過熱とインフレが脅威と警鐘を鳴らした。16日付伯字紙によると、トンビニブラジル中銀総裁は、今週も政策基本金利(Selic)引上げなど、既に対策を講じていると応じている。

 ニコラス局長は、原油や食糧の価格高騰などは輸出国の経済を潤すと共にインフレ圧力ともなると警告したが、景気過熱やインフレは中国やインドでも起きており、11日付G1サイトなどが報じた新興国のインフレは世界経済の脅威とのIMF見解と軌を一にする。
 IMFの試算では、ラ米やカリブ諸国の2010年の経済成長率は平均6・5%で、今年も4・75%程度の成長を記録すると見ている。
 コモディティ価格の高騰に伴い、原油や食糧の輸出国が潤う事がラ米諸国への経済的な追い風となる事は明らかだが、これが他の新興国などの経済成長と重なって、新たなバブルを呼ぶ可能性は増しており、専門家は警戒感を強めている。
 急速な経済成長は、国民所得や生活の質の向上ももたらすが、その所得向上を相殺してしまうインフレがブラジルでも頭痛の種となっている事は、昨年末から続く、預金準備率やSelic引上げにも表れている。
 ジウマ大統領は訪問先の中国で、先進国の通貨政策の影響で世界的なインフレや通貨価値の不均衡が起きていると発言する一方、トンビニ総裁に今年のインフレが政府目標の年4・5%を上回る事も了承と伝えた。
 ブラジルの3月のインフレは0・79%で、12カ月間では6・5%。この数字は、欧州の3月平均2・7%、中国の5・4%、インドの約9%に比べれば安定しており、沈静化の動きもある。
 しかし、景気の回復が早かった原因でもある国内消費の過熱が現在も続いており、国際収支の赤字も拡大傾向にある中でのインフレ抑制は必至。トンビニ総裁もワシントンで、19、20日の通貨政策委員会(Copom)でのSelic引上げを示唆した状態だ。
 ただ、インフレ抑制のためのSelic引上げが外国投資の流入を加速し、更なるレアル高やブラジル企業の国際競争力低下を招く事への懸念は依然として残る。IMF春季会合と共に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議では、高利回りの途上国市場への投機資金流入対策については歩み寄りが見られなかったといい、世界経済の不均衡是正への取り組みのあり方が見えてこない状態下、国内のインフレを抑えつつ、国外からの投機や為替不均衡による影響回避という、困難な舵取りはまだまだ続く。