ニッケイ新聞 2011年4月19日付け
サンパウロ日伯援護協会(援協)の第1回評議員会が16日午前10時から福祉センターで開かれた。この日行われた理事会選挙には、森口イナシオ会長、菊地義治第1副会長をそれぞれ代表者とするシャッパ(候補者連記名簿)が提出され、注目を集めていた。投票の結果、菊地氏側のシャッパが4票の僅差で選ばれ、新理事会の互選により菊地氏が新会長に就任した。
午前10時の第2次召集時点で正評議員52人のうち44人(委任状8人)が出席。定款改正と評議員会設置後はじめての会長となった野村次郎氏は、「援協は59年の創立以来進歩を続け、大きな組織になってきた。最後のご奉公として健康の許す限り務めたい」と述べた。
最初に事業・会計報告と事業計画・予算案の審議が行われた。
昨年は運用益等を含み約2億60万レの収入があったものの、管理関係の費用が増加したこともあり、収支は約33万レの赤字。今年度予算は2億553万1千レを計上した。うち友好病院部門は1億9283万6千レ。
事業計画としては、本部や日伯友好病院への新コンピュータシステム導入、傘下福祉施設の改修ほか、やすらぎホームデイ・センターの開設や自閉症療育青空学級における指導員育成などを計画している。いずれも拍手で承認を受けた。
援協初の複数シャッパ提出となった理事会選挙だが、冒頭から25人中19人の理事候補が重複していることについて異議が上がった。
選挙規則に重複を禁じる項目があることから、定款違反であり、この日の選挙は無効との意見が複数の評議員から出された。これに対して大原毅法務委員長から、重複禁止については評議員会役員が検討し、削除した経緯を説明。しかし一般評議員への説明がなかったため、一時紛糾した。
最終的に評議員会の席で削除の決定を承認する形で選挙を実施することを賛成多数で決定。森口、菊地両氏が所信表明を行った。
2期4年の任期の間に創立50周年、社会福祉センター完成など多くの事業に尽力した森口会長は、会長の地位のため続投を望むのではないと言明。同会が免税措置を受けられる公益団体認可更新のため、グアルーリョス市とのSUS(統一医療保険)提携や、行政や専門家との接触を続けていることを説明し、「この問題を整理しなければという責任を感じている」と述べた。
これに対して菊地氏は、日系人、そして困った人を助けるという創立以来の援協の精神を強調。公益団体認可は大きな問題としながらも、行政との提携によって負債が発生し援協にのしかかる可能性を指摘した。同問題について「会長だけの責任でなく、役員の承認を得て進めるべき」との考えを表し、オズワルド・クルスなど他国民族系の大きな病院と協調して今後進む道を検討すべきと持論を展開した。
投票の結果、25票対21票の僅差で菊地氏側のシャッパを選出。森口氏は「これからも私に手伝えることがあればやっていきたい」と述べ、任期中の協力に感謝を表した。菊地氏も森口氏の功績を称え、「先輩会長、評議員の皆さんと力を合わせ、より多くの人に手を差し伸べられたらと思う」と述べた。
その後、新理事会による話し合いが行なわれ、菊地氏を会長とする役員が承認された。
菊地新会長(71、岩手)は南米産業開発青年隊員として渡伯。岩手県人会長、県連副会長などを歴任した後、90年代前半から援協の活動に携わり、専任理事、副会長を経て現在は日伯友好病院の経営審議会会長を務める。
会長以下、当日決定した役員は次の通り。
会長=菊地義治、第1副会長=毛利連、第2同=尾西貞夫、第3同=山下忠男、第4同=坂和三郎、第5同=与儀昭雄、専任理事=紫牟田寛。
常任理事、会計などその他の役員は今週中に決定する見通し。