ニッケイ新聞 2011年4月26日付け
日本から一時帰国した日系人を狙った強盗事件が17日早朝、スザノ市の福博植民地(福博村)で起こった。空港から自宅に着いた時を狙うのはたびたび聞く手口だが、今回の事件は帰国から10日後に発生している点が異なる。しかも強盗グループは連邦警察の制服、装備を身につけていたという。訪日就労者の帰伯が続く現在、同村関係者は「どこでも起き得る事」と注意を促している。
事件が起こったのは17日午前6時10分頃。福博村の外れで農業を営む二世男性A氏(50代)宅の外からA氏らを呼ぶ声が聞こえた。見ると連邦警察の服装をした男4人の姿があった。
この10日ほど前、日本に住むA氏の家族4人が一時帰国していた。実は2年前に同じ家族が一時帰国した際にも空港からつけられ、強盗の被害に遭っている。
今度も強盗だと直感したA氏は夫人に警察へ連絡するよう指示。その間外の一団は名前を呼び続け、ついには家の玄関ドアを蹴り始めた。さらに窓ガラスを割り始めるに至り、やむなくドアを開けた。
入ってきた4人組のうち、50代ぐらいのリーダーと見られる一人が持っていた機関銃でA氏を突こうとした。A氏はかわした。「なぜ開けなかった」と詰問する男性。A氏が強盗と思ったことを告げると、自分達が連邦警察の人間だと名乗り、帰国した家族の荷物に疑いがあるため調べに来たと告げた。
名指しされた人物は不在だったが、一団の3人が部屋の物色を開始。鞄や装飾品、カメラなどを机に並べていった。
その時、家の電話が鳴った。知人からの通報を受けた地元の警察からだった。トイレに入っていたA氏に代わって応対した夫人は「誰もいない」と返答。電話を切った後リーダーから問い詰められたが、業者からと機転を利かせて乗り切った。
物色が始まって約1時間が過ぎた時、リーダー男性の携帯電話が鳴った。電話を受けた男性は突然「行くぞ」とポ語で他の3人に知らせ、一団は立ち去った。A氏たちが気がつくと、机に置かれた物のうち、レアル、ドルなど現金と金の入った鞄が持ち去られていた。一団が去って10分後、スザノの警察が到着した。もう少し早ければ銃撃戦にもなり得るところだった。A氏は後日出頭し、事件のあらましを説明したという。
この日、事件が起こる前の早朝には、被害者宅の付近で不審な大型車が目撃されており、犯行グループの周到な準備をうかがわせる。犯行中の電話は、他に見張りの人間がいたことを示している。被害者によれば、一団の服装も本物と見間違えるほどで、リーダーの言葉遣いは正しいものだったという。
帰伯後しばらく経って安心したところを狙った今回の強盗事件。帰伯者はブラジルに到着した時から家に着くまで、おかしな点がないか一貫して注意が必要だ。
事件を知る同村関係者は、「強盗に入られたらしょうがないが、被害を少なくすることはできる。金を一カ所に集めないなどの対策が必要」と語る。さらに、「これからどんどん、日本から戻ってくる。スザノだけでなく、これは日系社会の問題だと思う」と警鐘を鳴らしている。