ニッケイ新聞 2011年4月27日付け
中銀が25日、今年のインフレは政府目標値の年4・5%を超え、6・34%に達するだろうとの市場調査の結果を発表した事を受け、ジウマ大統領が、政府の優先課題としてインフレ抑制に取り組むと発言した。26日付伯字紙は、就任以来、インフレ再燃は認めない事と経済成長の持続を言い続けた大統領の語調が変化と報じている。
インフレ抑制が優先課題との表現は、17日付フォーリャ紙にも掲載されていたが、大統領は25日、価格高騰は政府にとっても重大な懸念事項で、全力を挙げて対処すると再度明言した。
25日から始まった風邪の予防接種キャンペーンに参加した大統領は、接種直後のインタビューで、「インフレの事は非常に心配しており、政府の関心もその抑制に集中している」と発言。具体策についての言及はなかったものの、同日はギド・マンテガ財相らと経済・社会開発審議会の初会合も開いている。
原油を始めとするコモディティ価格高騰などに伴うインフレ高進は世界的な傾向だが、マンテガ財相は、ブラジルは価格調整のための準備が出来ていると発言し、金融面の引締めや公的支出の抑制と農産品供給の増加などで、インフレ抑制は効を奏し始めているとの見解を明らかにしている。
一方、20日の通貨政策委員会(Copom)で、経済基本金利(Selic)が市場の予想を下回る0・25%ポイント引上げで年12%となった事について、中銀の元理事らから、このままでは政府目標の4・5%はおろか上限の6・5%突破の可能性ありとの声も出ていると21日付伯字紙が報じた。
Selicの引上げはインフレ抑制策として働く一方、需要の抑制や生産減少、失業増加と、外国投資の流入回避のために小幅の引上げとなったと見られるが、2年連続でインフレが目標値を上回り、来年の目標達成も危ういとなれば中銀の信頼失墜と懸念する声もある。一方、中央労組などは、委員会当日、貧困の象徴として鰯を焼き、失業や購買力低下に繋がる金利引上げに反対。
購買力の低下に関しては、26日付エスタード紙が、給与は上がってもインフレ以下の調整だったりして、実質的な向上の見通しは僅かと報道。22日付フォーリャ紙では、原材料値上り分を製品価格に上乗せした値上げや価格は同じでも中身を減らした商品販売などの実態も報道された。
インフレ対策として打ち出された公共支出削減においても、連邦警察が経費不足で国境付近での麻薬組織や武器密輸の取り締まりを制限せざるを得ないと言い出したと18日付フォーリャ紙が報じるなど、不安材料も表面化してきている。