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持ち家希望の実現遠のく?=所得以上に上がる経費=建築期間の長期化が響く=お役所仕事も遅れを増幅

ニッケイ新聞 2011年4月29日付け

 25日付エスタード紙によると、国内のブームに煽られ、ここ5年間の不動産価格は実質的に2倍となり、建築工事もますます長期化の傾向にあるようだ。28日付同紙によれば、書類審査などに手間取り、土地購入から完成した不動産の引渡しまで83カ月というケースもあるという。

 国際的な金融危機前から始まっていた持ち家購入や建設への動きが、危機脱出後も工事の長期化や経費高騰で停滞、夢の実現が遅れるなど、様々な問題が生じている。
 自己資金を貯め、購入または建設を決めた人々にとり、購入契約などの際約束された期日は、次の生活設計に欠かせない情報の一つ。ところが、実際には、09年11月に鍵引渡しとの約束が現在も実現せず、転校手続きを済ませた子供を遠方から通わせるといった問題が引きをきらない。
 この傾向は、07年第1四半期には25%だった工事完了まで30〜45カ月という契約が、11年には40%に増えたとのブラジル資産調査社(Embraesp)のデータからも明らかだ。
 一方、建設工事が長引けば、技師や左官の手数料などの支払いも長期化し、建築材料の値上がりと相まって、その経費はますます高くつくという悪循環も起きて来る。
 この辺の事情は、08年以降の不動産価格の上昇率は平均82・1%だが、所得の伸びは平均15・6%という数字からも伺われ、契約や工事発注済の場合以外でも、持ち家実現が遠のいたと見る向きも多い。
 そういう意味で、ルーラ政権が導入した「ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ(我が家、我が人生)」計画は、政府の補助を得て、より容易に持ち家実現を目指すものだが、こちらも、国会審議や土地取得、工事の遅れなどで計画通りに進んでいないようだ。
 工事の長期化は、ブームに乗った購入契約や建設発注が増え、建築資材が底をついたりしたのに加え、熟練した労働者の不足や、各種審査に手間取り、建設許可などの工事以前の手続きが長期化している事なども原因。
 建築資材の不足などは企業努力でカバーできても、熟練工が1日でやる仕事も新人は2日かかるといった人材不足や、お役所仕事の部分は企業努力では埋め難い上、土地購入から物件売却までの経費増は、最終的な売却価格上昇にも繋がる。
 工事の長期化で支払い期間が伸びれば、経費増でも月々の負担増が少なくて済むという人もいるが、24日付エスタード紙の建築関連インフレ指数は直近12カ月で6・90%上昇の記事や、サンパウロ市の新築物件販売数が2月に前年同月比で34・6%減少の記事は、季節的な要因だけでは説明できないものだろう。