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日系社会、企業の助けになる人材=大阪商大から古沢教授=日伯で日系人の意識調査

ニッケイ新聞 2011年5月3日付け

 日本企業の国際人的管理における「日系ブラジル人の活用」について研究を行っている古沢昌之・大阪商業大学総合経営学部教授がブラジルでの調査のため3月に来伯した。

 文部科学省の09年度科学研究費補助金を受けて3年計画で行われる同研究で古沢教授は、日系ブラジル人を経営資源として捉え、日系社会、ブラジルへの日系進出企業、在日日系人の3方面から調査を行っている。
 ブラジルでの調査は昨年に続き2回目。同月21日まで滞在し、サンパウロ、マナウスの日系企業、商議所、日系団体での調査のほか、サンパウロ大学の日系人学生を対象に就職先としての日系企業のイメージやアイデンティティ、日本語能力などに関するアンケートを行った。
 同研究は09年から行われており、古沢教授はブラジルでの調査のほか、大泉や豊橋など日本国内のブラジル人集住地で在日日系ブラジル人に対するアンケートや聞き取り調査を実施しており、その中間報告をまとめている。
 このアンケートは、在伯日系企業の経営や日系人との関係のほか、来日前から現在までのアイデンティティの変化、雇用や子供の将来などについて質問し、回答を数値化したもの。
 在伯日系企業に対しては、人間関係や社内規則などのほか、現地化が不十分であることや、日系人にとってはブラジルの会社のみでグローバルなキャリア機会が少ないことなどが否定的な面として目立つ。「全体としてこうしたイメージを持たれているということを踏まえる必要がある」と古沢教授は話す。
 日系企業と日系人・コロニアの関係については、日系人を日本語能力だけで見ているという答えが最も高い数値を示した。
 来日前の状況としては、両親・祖父母から日本や日本人について話を聞いており、日系人としての誇りや信用を感じていたとする人が多いが、それに比べ、積極的に日本語を学んでいたという人が少ないのが特徴。それが来日後は日本語や日本文化に触れる機会が増え、母国の知人や家族との連絡も多くなる。来日後の変化としては、将来のキャリアアップにつながる知識や技術が身についたという回答が最も高かったという。
 現在の不安としては、物価や雇用の問題。また子弟の将来について、ブラジルの日系コロニアの行事や活動に積極的に参加させたいと考えている人が多く、日系企業就職や日本の大学への進学を希望する回答も高い。
 古沢教授は今年1月から3月にかけて、日本国内の集住地のイベントなどで日系人にアンケートを行ったが、「日本語をもっとやっておけば良かった」という声が多く聞かれたという。
 デカセギ開始から20年が過ぎ、60歳以上の人や四世もいる時代。年齢や学歴も多様化し、日本の大学を卒業する人も出てきている。古沢教授は、「日本語能力や日本企業での経験がある日系人の中には、日系企業の経営の助けになる人、日系社会活性化の刺激になる人もいるのではないか」と話す。
 さらに150万といわれるブラジル日系人を「日系企業の比較優位性になりうる」と位置づけ、優秀な人材を引き込むため企業の人材管理について考える必要があるとの見方を示した。