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極貧撲滅の対象は1627万人=判断基準は月収70レ=それでも人口の8・5%=望まれる総合的社会政策

ニッケイ新聞 2011年5月5日付け

 ジウマ大統領の選挙公約の一つである極貧撲滅は、月収70レアル以下の1626万7197人が対象となると4日付伯字紙が報じた。選挙戦当時の最低賃金の4分の1(現在では136レアル相当)という発言より対象が狭まったが、それでも総人口の8・5%を対象とする事になる。

 ルーラ政権が「フォーメ・ゼロ(飢餓撲滅)」を目指して導入したボウサ・ファミリア(生活扶助)は世界的な注目も集めたが、ジウマ政権最優先課題の「極貧撲滅」も、今回の基準確定で具体的な対策が煮詰められる事になる。
 極貧撲滅政策の取りまとめ役はボウサ・ファミリア導入の立役者でもあるアナ・フォンセッカ氏で、関連閣僚らを集めた3日の会合では、2010年国勢調査の最終結果を基に、家族一人当たりの収入が70レアル以下の人を対象とする事などが確認された。
 ブラジルの場合、社会福祉政策の対象を定める基準は統一されておらず、月収70レアルが極貧にあたるか否かは議論が分かれるところだが、国際基準は1日1・25ドル以下だから、現在の為替なら58レアル程度。2014年までに撲滅との公約実現のため、選挙戦当時の大統領発言より基準が狭められたが、国際基準からいえばOKといえる数字だ。
 ただ、それでも総人口の8・5%が対象という数字は、極貧撲滅が容易ではない事を暗示。具体的には、北東部960万9803人、南東部272万5532人、北部265万8452人、南部71万5961人、中西部55万7449人が対象で、市街地在住者は53・3%の867万3845人、農村部在住者は46・7%の759万3352人だ。
 一方、3日にジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)が発表した貧困や社会格差に関する調査によると、2010年の社会格差は所得のばらつきなどを加味したジニ係数で0・5304。1990年の0・6091や2001年の0・5957より改善し、1960年の集計開始時0・5367とほぼ同じだ。
 調査によると格差縮小の主要因は学歴の向上とそれに伴う所得向上。所得の高い方から20%の層の学歴と所得の伸びは8・1%と8・9%だったのに対し、所得の低い方から20%の層の学歴と所得は55・6%と49・5%の伸びを記録。
 4月30日付エスタード紙には、米国では低学歴、低所得者ほど景気回復の遅れの影響を受け、社会格差拡大とある事からいけば、ブラジルの格差縮小はルーラ政権の社会福祉政策と景気回復の相乗効果ともいえるが、極貧者の70・8%は黒人か混血(パルド)、50・9%は19歳以下などの数字は、来週発表予定の具体政策には、補助金支給以上の多角的な内容が必要な事も示している。