ニッケイ新聞 2011年5月7日付け
東日本大震災と福島原発があり、GW連休の旅行も例年よりかなり寂しい。あの津波では25000人ほどが死亡し行方不明になり、原発事故の解決と収拾の目処もついていない。コメの産地でしられる福島では、放射能のために田植えを禁止され、町ぐるみで避難し、いつ帰れるのかと不安に怯えるところもある。こんな苦しみの中では、渓谷の温泉でのんびりともいくまい▼それでも4月29日の「昭和の日」から11日間も続く連休には、旅に向かう人もいる。国内では、田舎への帰郷もあるだろうし、必ずしも物見遊山ばかりではなかろうが、それでも1570万人が、空や新幹線と愛車のハンドルを握り高速を突っ走った。でも—昨年よりも27%も減っているのだから、やはり震災への思いやりがあったと見たい▼ハワイで背を焼き、中国の名所旧跡組も41万人と去年に比べると16%少ない。だが、遯生のような鈍才には海外旅行など夢のまた夢だったのに—今は経済的な豊かさもあって自由自在に世界狭しとばかりに飛びまわる。いささか羨ましいけれども、この歴史的な哀しみに沈みながら海を越える旅立ちでもあるまいにの思いも強い。あっ、横道に入りすぎました▼閑話休題 —。それにしても、誰が思いついたのか、GWとは実に上手い。日本人は国の祝祭日が好きらしく、昭和天皇の誕生日を「みどりの日」にしたと思ったら綿貫民輔氏(元衆院議長)らが「昭和の日」とし、「みどりの日」を5月4日にしたのは、まさに神業に近い。そして最近の日本は祝祭日天国になったのはご承知の通りである。(遯)