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半世紀続く移民船のきずな=今年もあめりか丸同船会=ピニャールで親睦温める

ニッケイ新聞 2011年5月11日付け

 1959年4月23日にサントス港へ到着した移民船「あめりか丸」の同船者会が先月23日に開かれた。ちょうど着伯記念日の開催となった同集いも今年で34回目。今回はサンミゲル・アルカンジョ市のコロニア・ピニャールを会場に、サンパウロ市はじめ各地から30人余りが集まって互いの元気な姿を喜び合った。

 サンパウロ市からの参加者を乗せた車は午前7時にリベルダーデ広場を出発。会場となるピニャールには、同船の山下治さん(75、福井)が住む。今年の集いは同地在住の天野鉄人氏の好意により、同氏が建てたゲストハウスのサロンで開催され、当日は天野氏ほか、コチア青年1次1回の山田貢さんも訪れた。一行が到着すると、山下夫人の重子さん、地元の婦人たちが料理の準備に勤しんでいた。
 昼食会冒頭、長年世話人を務める坂東博之さん(73、徳島)が挨拶。渡伯5周年の年に始まり、20周年以後毎年続く集いの歴史を振り返り、開催にあたっての山下夫妻、天野氏、婦人らの協力に感謝を表し、「ゆっくり楽しんでほしい」と話した。
 山下さんは、「34回を数える同船会はブラジル一だと思う」と、坂東さんはじめ関係者の尽力をねぎらった。太平洋での船酔い、皇太子殿下(当時)のご成婚を祝って鯛が出されたことなど、「早く着く必要がなかった」航海中の思い出を振り返り、「ブラジルに着いてからは喜び、悲しみ、皆さん色々苦労したと思う」と挨拶し、「皆さんが元気で、来年の同船者会にも行こうかという気持ちになるよう願っています」と述べた。
 柴田勝男さん(76、群馬)の発声で乾杯し、出席者は会場のあちこちで語り合い旧交を温めた。
 コチア青年2次1回の89人が乗った同船。ミナス州ツルボランジア在住の高島嘉希さん(71、福井)は前日から同地を訪れていた。
 青年のうち18人は高校の卒業式前に乗船しており、高島さんもその一人。78年に同地のコチア産組トマト生産団地に入り、現在は息子が引き継ぐ。「何年かごぶさたしていたけど、こういう集いはいいですね」と笑顔を見せ、世話人らの奔走に感謝していた。
 梅田秀広さん(74、熊本)は叔父の椰子栽培を手伝うためバイーア州のテイシェイラ・フレイタスへ。その後植林を手がけ、今は息子に任せてサンパウロ市に住む。「家族移民の中には見ただけで分からない人もいますけど、懐かしいですよ」
 2次移住の始まりだった同船の青年たち。渡伯前の実習では「甘いものじゃない。今からでも止めていい」とも言われたという。羽鳥慎一さん(70、群馬)も卒業式を前に乗船。最初のパトロンの所を出てからは「サパトンとマーラを抱えて〃放浪〃した」と振り返る。「色々あったけど、俺たちは好きなことをやってきたから後悔はしていない。家族の協力があって、皆が育ててくれた」と話した。
 13歳の誕生日を船上で迎えたという高野(旧性・井本)キミ子さん(65、熊本)。「日本が懐かしくなることもあった」が、苦しい移住後の生活の中でも父親は出聖のたびに雑誌「女学生の友」と買ってきてくれたと振り返る。「友人、環境に恵まれた」という高野さん。4、5回目という同集いについて「距離感がなくて、すっと入っていける。楽しみになってきました」と話していた。
 集いは午後3時ごろに終了。参加者は山下さんからの柿、ボツカツから訪れた斎藤良一さんからのアルファッセなどを土産に、再会を約して帰途へ着いた。