ニッケイ新聞 2011年5月11日付け
長年コロニア文学界に関わり、様々な文学賞の選考委員も務める安良田済さん(95、山口)の著書『戦時下の日本移民の受難』(日ポ両語)の出版記念パーティーが14日午後2時から、文協ビル(サンジョアキン街381)9階の日本移民史料館サロンで開かれる。
編集に携わった新井勝男さんとともに5日来社し、来場を呼びかけた。入場は無料、50レアルで販売される。
同作品は戦前移民の徳尾恒壽、半田秀男という個人の日記を中心に、戦時中下でブラジル日本移民が経験した苦難を深く掘り下げられた意欲作。
戦時下の4年間、日本移民は敵性移民としてブラジル政府に法的に拘束され、人種的偏見も加わり、悪質な官憲の圧力に虐げられた歴史がある。
この2人の日記は、日本語が禁止されたこの期間に書かれた資料として非常に貴重なもので、以前、本紙の前身である「日伯毎日新聞」で連載されていた。
2008年の移民百周年を契機として、2人の日記を中心に、これまで収集してきた記述を構成、再調査した安良田さんは、1年半かけて執筆、編集作業を行った。
これまで数冊の本を安良田さんと編集し、『コロニア随筆選集』の編集委員も務めた新井さんは、編集と調査に加え、表紙の写真を担当した。
表紙のイメージは、「文芸同人誌『国境地帯』発行者の菅沼東洋司さんからアイデアを得て、日本移民が受けたブラジル政府による言論の弾圧を表現した」。
安良田さんは、「戦時下に日本移民が受けた受難の体験者は老齢化し、死去している。我々の世代が記録しない限り、資料は散逸したまま、いずれ体験は風化して消え去ってしまうと思った」と話し、「日本移民の歴史の1ページとして確実に残すために、1冊の本としてまとめた。ぜひ多くの人に読んでもらいたい」と語った。
同作品は300部印刷され、200冊が文協史料館に寄付される。リベルダーデ区の書店「太陽堂」、「フォノマギ竹内書店」で、50レアルで販売される。