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サンパウロ州襲った恐怖の嵐から5年=警察の汚職体質指摘の声=PCCは弱体化と保安局長=現場では事態悪化を懸念

ニッケイ新聞 2011年5月13日付け

 2006年5月12日にサンパウロ市などで殺人や放火などの事件が頻発し始めた〃恐怖の嵐〃から5年経ち、米国ハーバード大学の学者らが警察の汚職体質などが当時の混乱を生んだとの分析結果を発表。アントニオ・フェレイラ・ピントサンパウロ州保安局長は、PCC(州都第1コマンド)は弱体化したというが、現場担当者らは、現在のPCCは当時よりも危険との見方を明らかにしている。

 06年5月と聞いてPCCの名前が浮かぶ人は、当時の記憶がまだ生々しい人だろう。5月12〜20日だけで496人が銃弾に倒れたのを始め、バスの焼き討ちなども頻発。州内144の刑務所中74カ所で暴動も起き、枕を高くして眠れない日々が続いた。
 9日付エスタード紙が掲載したのは、06年の嵐の原因は、PCCリーダーの移送や大統領選の妨害というより、2005年に起きた市警によるPCCリーダーの養女誘拐事件への報復で、警察の汚職体質が輪をかけたとの、ハーバード大学法学部国際人権講座所属の学者や非政府団体(NGO)ジュスチッサ・グロバウ調査員らがまとめた分析の結果だ。
 警察の汚職といえば、昨年のリオ州警察での犯罪組織への内通告発などもその一例だが、06年のサンパウロ州でも、PCC関係者の脱獄幇助を約束し、多額の金を受け取った警官などが摘発された。
 一方、当時の警察内に汚職体質があった事は認めながらも、PCCは弱体化し、国内でも警備の厳重さで知られる刑務所にいる約30人以外は実質的に解体状態と見ているのはサンパウロ州保安局長。
 12日付エスタード紙によれば、同局長は、PCCには06年のような大規模犯罪を起こす力はなく、当時の首領マルコス・ウイリアム・カマッショことマルコラのように経済力のあるリーダーは少数だという。
 これに対し、現在のPCCは表立った行動こそとらないものの、依然として勢力を保っており、06年よりかえって危険と見ているのは、刑務所監視員、軍警などの現場担当者やNGOなどの研究者達だ。
 実際には、リオの犯罪組織〃アミーゴ・ドス・アミーゴス〃と悪魔信奉集団が協力関係を築き、PCC関係者とは別の刑務所に収監する必要がある事やPCCによる闇裁判の例は後を断たない事などが報告され、9日未明のサンパウロ市とサントアンドレ市の警察署襲撃事件は嵐再来の前兆と恐れる声もある。
 ジェラウド・アウキミン知事は二つの事件とPCCとの関係を否定しているが、2014年W杯のような大型イベントも近づく中、なりを潜めた犯罪組織が事を起こす前に、綿密な治安対策を講じる必要がありそうだ。