ニッケイ新聞 2011年5月17日付け
山形県鶴岡東高校サッカー部の遠征チームが3月下旬からブラジルを訪れ、4月1日からサンパウロ州ピエダーデを公式訪問した。2泊3日の滞在中は親善試合に加え、地元の文協や日系人との交流事業もあり、同地日系社会と親睦を深めた。
同高サッカー部のブラジル遠征は09年4月に続いて2回目。鶴岡市で08年に開かれたサッカー交流祭にニッポン・カントリークラブチームが招待された際に引率した国井精さん(74)が同校関係者と知り合ったことがきっかけとなり、国井さんが会長を務めるブラジル国際交流協会がピエダーデ訪問の世話をした。ジェレミアス・リベイロ市長も、農業の町である同市の発展に日系人が果たした役割を評価し、市の条例による公式訪問という形になった。
来伯したのは渡会健史監督、助監督の佐藤洋さんと1年生の選手ら計18人。サントスとアチバイアで練習試合を行い、4月1日からピエダーデを訪れた。
市長を表敬訪問した後、一行はピエダーデ文化体育協会日本語学校を訪れた。教師、生徒らの発案で日語校生徒は日本の国旗、鶴岡東高の選手はブラジルの国旗を作り、交換した。選手たちの緊張も次第にほどけ、和やかな交流の雰囲気だったという。同日夜には市営球場で同市のユース選抜チームとの練習試合も行われた。
翌日には地元のクラブチームと練習試合を行い、午後は地元日系人の花卉栽培業者の農園を訪問。夜には文協で交流夕食会が開かれ、250人が集まった。文協の青年らによる太鼓やYOSAKOIソーランのほか、地元の子供たち、選手たちがそれぞれ踊りも披露。最後は会館の中に踊りの列がつながるほどの盛り上がりを見せた。
最終日の午前中は文協のサッカーチームのほか、女子チームとも交流試合。地元の坂口農場で柿もぎを体験してサンパウロから帰国の途に着いた。
滞在中一行は文協の会館に宿泊し、日語校の生徒やサッカー、太鼓、柔道、野球などの運動部のメンバーが交代でシュラスコやフェイジョアーダ、朝のカフェなどを準備。お土産のアルカショフラの瓶詰めも地元文協が用意した。
山形県出身のコチア青年で同地在住の門脇孝一さん(74)は同郷の選手らのため、一日中同行して世話をしたそうだ。「初日の試合で勝った時には子供のように喜んでいました」と国井さんは思い出す。門脇氏の夫人も、自身が作った布巾に絵を描いた手芸品を人数分用意して一行に贈ったという。
長年スポーツを通じた交流事業に携わる国井さんは、地元日系社会の歓迎に加え、会ったばかりの子供たちがすぐに打ち解けて連絡先を交換するほど親しくなった様子を振り返り、「若者の交流が芽生えた」と喜ぶ。
「渡会監督も『言葉もない』と感動していた」と国井さん。「最初は固かった選手たちも、日本語でこれだけ交流できることにびっくりしていた」と振り返り、「ブラジルの日系社会の活躍、日本語や文化を継ぐ人がいることを目で見て肌で感じてくれて嬉しく思っている」と語った。