ニッケイ新聞 2011年5月19日付け
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「2011年世界競争力年鑑」によると、対象59カ国中のブラジルの国際競争力は、2010年の38位から44位に6ランク低下と18日付伯字紙が報じた。雇用創出などでは目を見張るものがあったブラジルも、生産性や効率の良さではまだまだ改善が必要なようだ。
IMDによるブラジルの国際競争力評価は、2007年以降ずっと向上し続けていたが、38位から44位へと6ランクの低下には、生産性や効率が38位から52位、生活費のランクも39位から51位に下がった事などが響いたようだ。
国際競争力は、国内や国外の市場において競争する民間部門が、政府の行動が予算などにより制約されて深刻な障害に直面する場合などに問題視されるもので、経済活動の実績や効率性、基幹構造などの項目毎に細目を立てて評価される。
経済活動は、国内需要が19位から10位、雇用が16位から11位に向上したりした事で、37位だった全体評価も30位に上がったが、その一方、インフレが進んで生活費が高くなった事で価格評価が39位から51位に低下した。
一方、民間部門の効率性は、所得向上などを反映した労働市場評価が上がった以外は軒並み低下し、全体評価も24位から29位に下がった他、政府の効率も、社会構造面の評価低下などで52位から55位に、基幹構造の評価も49位から51位に下がった。
ブラジルでは、労働者の所得向上が人件費増につながって生産費が高くなった事とレアル高で輸入品を買う方が安くつくようになり、工業部門を中心に競争力が低下しているのと共に、雇用が増えた部門の生産性評価が低い事などから生産性や効率評価が低下しているが、労働者の質の向上抜きでの生産性や効率改善は困難で、経済成長が年4・5%程度に止まる原因となるとの声もある。
労働の質向上には教育も欠かせないが、需要の拡大がインフレ高進につながり、中銀が政策金利を引き上げる事で民間企業の資金繰りにも影響が出るなどの悪循環を断つのは容易ではない。
また、民間部門と政府の評価の格差が大きい事もブラジルの特徴で、政府による投資や税制改革、基幹構造整備の遅れをどのようにして改善するかも大きな課題だ。
ブラジルはメキシコやトルコ、ペルーなどの後塵も拝した形となったが、1位には昨年2位と3位の香港と米国、3位は昨年1位のシンガポールと上位3カ国は健在。BRICSでは、中国とインドが1ランクずつ下げて19位と32位、ロシアは2ランク上げて49位。新参入の南アフリカは、44位から52位とブラジル以上の低下を記録した。