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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年5月19日付け

 あの阪神震災のときもだが、陛下は罹災者のお見舞いのため宮城や福島両県を訪問され、親しく話し掛け励まされたのは、何とも美しい。陛下はすでに47都道府県を行幸されており「国民と共に歩む」をご自分から実践されているが、お年寄りや小さな子どもらと会うときには、皇后さまと一緒に床に膝をついてご挨拶する写真は、とても微笑ましい▼皇太子さまや秋篠宮さまも、両妃殿下と大震災の現地に向かい津波と放射能に苦しむ人々元気付けているのは、これからの皇室のあり方を示す一つの象徴と見たい。地震や洪水などの災害だけではなく、今上陛下は、あの大東亜戦争の戦跡をも訪ねられ慰霊に力を入れておられる。戦後生まれの人たちには「肉弾3勇士」などの武勇伝は無縁だろうが、砲弾や爆弾で散華した日本兵たちに向かい陛下は皇后さまと共に手を合わせ霊慰されている▼渡邊謙が栗林忠道中将を演じた映画ですっかり有名になった硫黄島にも両陛下は慰霊訪問し、あの2万数千人の戦死者に合掌した。故栗林中将は、一般的には知られた軍人ではないが、あの島での「地下壕作戦」は今に語り継がれ、攻撃の米部隊を散々に困らせた。米の犠牲者も多く、兵300万、艦艇6000隻、航空機1万4千機を動員した第二次大戦最大のノルマンディ作戦よりも死負傷者が多く非難の的にもなった▼2万5千の戦死と5千名が自決した玉砕の島サイパンにも足を運ばれている。一般の人々も兵や士官らと生と死を共にし、1日に70数人が飛び降り自殺した「バンザイクリフ」でしられる島での慰霊であることも忘れまい。(遯)