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USP構内で学生殺される=閉鎖空間での犯罪頻発=一般社会の縮図に過ぎず?=治安確保の願いは届くか

ニッケイ新聞 2011年5月20日付け

 サンパウロ市西部ブタンタン地区のサンパウロ総合大学(USP)構内で18日夜、授業を終えて駐車場に向かった4年次学生が、後をつけた男性と揉み合った末、射殺されたと19日付伯字紙が報じた。大学構内で起きた事件とはいえ、治安への不安など、社会の縮図ともいえる事件に衝撃を覚えた市民も多いようだ。

 事件の発生は21時30分頃。同20分に授業を終え、駐車場に向かったフェリッペ・ラモス・デ・パイヴァさん(24)が、賊に襲われて殺されたニュースは即座に広がり、22時頃にはTwitterなどにコメントが寄せられ始めた。
 被害に遭ったフェリッペさんは、経済・経営・会計学部(FEA)の4年生で、会計学の授業を終え、帰宅するために駐車場に向かったところを襲われた。
 友人の一人はフェリッペさんが賊から逃れるように防弾処理された車へと走る姿を見ているが、逃げ切れずに賊と揉み合う内に銃を持っている事に気づき、車に乗り込もうとした時に撃たれたようだ。警察によると、フェリッペさんは片足を車に入れた状態で隣の車との間に倒れており、傍には380(9ミリ)口径の銃弾のカプセルが落ちていたという。
 銃声を聞いた警備員が駆けつけ、構内の軍警に通報したが、犯人は既に逃走後。携帯電話やカバンは現場に残され、何も盗られてないようだが、事件の起きた駐車場は防犯カメラもなく、犯人の目星はついていない。
 一夜明けた19日朝には事件を知った学生達が抗議行動を行い、学長らに治安改善などを求める文書を提出したが、USP構内では電撃誘拐や強姦などが増えており、危険なのはFEA周辺だけではないようだ。
 事件を知らない友人からの電話に「まだ帰ってない」と答えた後、いつもより帰宅が遅いと不安を感じ始めた時に、婚約者の親からUSPで何か起きたようだと連絡を受けたというフェリッペさんの両親は、大学に駆けつけた時点で、息子が殺人事件に巻き込まれた事を知ったという。
 昼間はパウリスタ地区の会社で働くフェリッペさんは、飛行機の操縦士になるのが夢で、外国を見てみたいと旅券を入手した直後。両親は、バスの中で強盗に2度襲われたために防弾車を購入したフェリッペさんは、スポーツマンで体格も良いため、汗水流して手にした物を安易に手渡す事を嫌い、強盗に抵抗したのだろうと見ている。
 サンパウロ市では強盗・窃盗事件の増加と共に、強盗殺人事件も増えており、治安の悪化はUSP構内だけの問題ではない。国際金融危機の頃から増加し始めた強盗事件などが今も頻発する状況は、銃の不法所持や人命軽視などの問題と共に、社会全体への警告でもある。